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まったりM&A現場閑話★セブン&ⅰに学ぼうPart.2(MBO)

世間を騒がせている『セブンアイ』の件をM&Aの視点から分析していくシリーズ第2段。始めまーす!

5.セブンアイHDの初期対応

セブンアイHDは東証プライム上場企業です。
株主に対して有意義になり得る提案が来た場合、真摯に検討し、それが全株主に有意義となれば受け入れる必要があります。
(例え大株主である創業家にとっては有意義でなくても!)

元々時価総額⒋5兆円でしたので、5.5兆円の提案は安すぎると突き返しました。

https://www.7andi.com/library/dbps_data/_material_/localhost/ja/release_pdf/2024_0906_ir01.pdf
米国ではシェア1位と2位なので確かに、シェアが高すぎる地域の店舗売却などの調整は出てきそうです

でも、その後、再提案で7兆円を突きつけられてしまいました。現時点での時価総額はそこまで上がっていないことから考えても、7兆円の提案を具体的な根拠なく安すぎるだけで突き返すことはできなかったようです。

6.コングロマリットディスカウントの解消

なぜ安すぎるのか? 全株主に納得いくように、7兆円以上の企業価値があることを具体的に示す必要が出てしまいました。
グループ間シナジー含めた事業の将来性でその価値を示せればいいのですが、残念ながら無理だったのでしょう……
結局、コングロマリットディスカウントの解消(コンビニ事業とGSM他事業を分けること)でしか企業価値の最大化を訴求できなかったようで、ついに、GSM等事業を実際に売りに出してしまうことにしたのです。

https://www.7andi.com/ir/file/library/ks/pdf/2024_1010ks_01.pdf
戦略的パートナー招聘で持分適用会社化とは、つまり80%以上の株式を売却するということです

創業家も、セブンアイHDも、双方ともにどうしても買収されたくなかったみたいですね。そしてこの決断は祖業を売ってでも、セブンイレブンは買収されたくないという強い意思表示でした。

しかも動きは早く、早速ヨークHDという中間持株会社を作ると公表の上オークションを開始し、11月28日には一次入札が終わったようです。
住友商事、日本のファンドであるJIP、米国ファンドのKKR、ベイン、フォートレスが手を挙げているとの報道。

それにしても、なぜ「さまざまな事業が連携しているからこそシナジーを生み出していけるんだ、成長戦略で時価総額7兆円など超えるんだ」と堂々と突き返せなかったのか。残念ですね。
結果として、コングロマリットディスカウントで企業価値が倍になるので自ら解体に拍車をかけるという状況は、創業者とセブンアイのタッグが構造改革ができていなかったことを認めるに等しい苦しい状況で、MBOしてもその体制が変わらないという問題が残り続けます。

これが、次章の悲しい動きにつながります……

7.創業家によるMBO

コングロマリットディスカウント解消だけでは買収を防げないと睨んだのか、ついにイトーヨーカドー創業家の伊藤興業が買収(MBO)を提案してきました。
マネジメントによる全株買収、つまりMBO(マネジメント・バイアウト)と言います。当然TOB、成功すれば上場廃止の非公開化で買収の危機は防げます。

創業家はセブンアイHDの株式を8.2%持つ大株主、そして副社長に創業家出身者がいることからも、セブンアイHDのマネジメントはかなり創業家に近いので、ACT社買収よりもMBOを選んだのでしょう。
すでにFA(財務アドバイザー)やリーガルアドバイザーをつけてMBO提案について検討していると公表しています。これはもちろん、創業家MBOだけでなく、裏でACTからの買収対応もしていると見るべきでしょう。

最終的にセブンアイHDがMBOを選択するとしても「公正な条件で比較しても、MBOの方がACT提案よりも全株主にとって有意義だ」と示す必要があり、そのためには「創業家だけ優遇した買収交渉をした」と思われてはいけないからです。

そこで、9兆円という提案がでてきました。
ACTは同業者ですのでシナジーも生みやすいけど、セブンアイHDが認めてしまったように、現経営陣では新たなシナジーは生みにくい(埋めるのなら既に生んでいるはず)ので、将来性で優位を示せず、結局金額を9兆円ととんでもなく吊り上げざるを得なかったのでしょう。まさに泥沼な状況です。

流石の伊藤家でもそんな資産は持っていませんので、協力者を集める必要があります。
最初に白羽の矢が立ったのはメガバンク3行(のちに5行という記事も)です。
そして、次に伊藤忠商事にも声をかけた模様。

なんと、ファミマの親会社ですよ!
セブンがファミマに協力を打診したということでしょうか。

一体、どんだけACT社の買収を嫌がっているんだろうということで、次回に続きます🎵

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