連載小説★M&A春風 第66話 まぁーだー?
第1話はこちら
鈴木の許可を得てから、経営会議が開催される15日木曜日までの3日間は、FA契約の調整で一杯一杯だった。
IWBC証券は早速フィーの提案を改善し、業務委託契約書のドラフトを送ってきている。真奈美は法務部の小巻と一緒に、細かい部分の修正提案を作ってはIWBC証券とキャッチボールをする。
何往復化した後、水曜日にやっと法務部最終チェックに持ち込むことができた。
「小巻~、まぁーだー?」
「うるさい。気が散るから。終わったらメールするから大人しく待ってなさい」
「……はーい」
契約書の締結前に、内示によって実質的に業務委託が始まるケースも多々あるのだが(その場合は、後日に契約締結することになる)、木曜日の経営会議までに契約の完成、決裁書の稟申を終えられる可能性が高まっている。
(こうなると、頑張りたくなっちゃうもんよね)
投資銀行との信頼関係からすればそこまで目くじら立てなくても良いのかもしれないが、法務部の小巻はきちんと一言一句しっかりとチェックをしてくれている。
(契約締結できたら、奢らなきゃいけないわね……)
真奈美は小巻に感謝しながら法務部のオフィスを出て、自分の席に戻るのだった。