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連載小説「転生ビジネス・カオスマップ」第七部 第13話 ノンリコ①
「では、私から説明します」
ハルトは交渉モードに入っているから、相手が銀行のお偉いさんでも関係なくいつも通りに話し始めた。
本当に……ヴァーゴ社内での役員会でも、オヤジ相手にめんどくさがらずにこのモードで片付けてくれたらいいのに……
「まず、ヴァーゴが子会社としてSPCを設立します。
そこにヴァーゴが1兆カルマを出資。
御行には2兆カルマのローンを入れてもらいます」
SPCとは特別目的会社のこと。
今回このSPCは、ターゲット企業買収行為を目的とする。
「SPCは計3兆カルマを使ってターゲット企業を買収し吸収します」
ハルトの説明を聞く面々の表情をみていると、なかなか面白い。
ジョージはさすがに融資担当執行役員。
このようなスキームは百も承知という雰囲気で淡々と聞いている。
一方、いつも会っているヴァーゴ担当者は、おろおろしながら資料を食い入るように読みながら説明を聞いている。
多分、まだ理解できてないんだろうな。
「SPCを使う利点は何ですか?」
ジョージが質問した。
知っているけど聞いてやるということか。
もしくは、その銀行員が理解しきれていないことを気に病んだか。
「SPCは対象事業を吸収合併します。
これによって、銀行は、ターゲット事業から生まれる利益から直接ローンの利子や元本返済を受けられます。
親会社への還元より先に返済を受けることができるということです。
あわせて、対象事業の保有資産をローンの担保に取ることができます」
つまり、親会社の信用力だけでは借りれない融資枠を、ターゲット企業の信用力を使うことで広げることができるということ。
ターゲット企業を買収するM&Aならではのファイナンス方法ね。
親会社は銀行より先にSPCの資金に手を付けられないけど、逆に、SPCが返済できない場合も、銀行は親会社に返済責任を遡及(リコース)することはできない。
ゆえに、ノンリコースローンという。
「あとは、金利ですね。
一般的にはリスクが高い分、金利も高いのでしょう」
そこまで聞くと、ジョージはにやりと笑った。
第一関門クリアしたかな?
「銀行のメリットはよく理解できました。
では、あなたたちのメリットは?」