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短編小説 M&Aってお魚買うのと似ているよね 第6話 PER

「買収価格は生み出されるお金が重要だから、それに近い指標として利益に倍率を掛けることで簡易的に算出されるんだ。その倍率はPER(Price Earning Ratio)と呼ばれているんだ」
「なるほどね。で、その倍率ってどうやって決まるの?」
「ブリと一緒さ。周辺の魚屋さんが百g三百円で売っていたら同じような値段で売るだろう? M&Aの場合は、類似する上場企業の時価総額と利益を調べればいいのさ」
「おお……合理的ね」

 絵夢の笑顔に俺もほっとする。他にEBITDAマルチプル法もあるし、プレミアムやディスカウントなどに触れるとキリがない。ここらで説明を終わらせよう。

「ちなみに事業領域によって倍率は違うんだよ。ブリだって、養殖ブリと天然ブリ、氷見の寒ブリでは百gあたりの値段は変わるだろ?」
「あはは。たしかに~」

 私がブリだったら氷見レベルかしら。という絵夢の呟きは聞こえなかったことにしよう。

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