2021.08.17. 自宅にて : 古本屋の話
今年のお盆はコロナの影響で実家に帰ることはできず,長雨の影響で外出もあまりしなかった. そのせいか非常に億劫な気分が続いたので今日は思い切って神保町の古本屋へ出かけてきた. 私は専門書を集めるのが好きなのでたまに神保町の古本屋,特に自然科学書専門店である明倫館によく足を運ぶが,今回はかなり久しぶりに行った気がする.
何度も通っているはずなのに毎回地下鉄神保町駅のどの出口が古書店街に近いのかわからない. 毎度毎度適当な出口から出ているうちにいつしか適当な出口から出ても古書店街にはなんとなく行けるようになっていた. しかし今日は運が良く古書店街の端っこの出口を引き当てることができた. 心配された雨であるがギリギリ降るか降らないか空が持ち堪えている様子で傘でアスファルトを突きながら明倫館へ向かった. 明倫館含め多くの古書店では比較的安価な古書を店先に本棚やラックに収納して並べているが, 今日は雨の影響でそこに透明なビニールのカバーが掛けられており遠目に見た時に定休日なのかと思ったが近づくと店内から僅かに光が漏れていた.
久々の明倫館は相変わらずとても情緒ある店内であった. 天井まで届くような背の高い本棚には洋書を含めさまざまな分野の理工書が詰められており, おそらくそこには入りきらなかったであろう分厚い書物が所狭しと積み上げられていた. その学問の歴史の中に登場するような昔の大先生が書いた教科書から名著と呼ばれつつも惜しくも絶版になった本もあった. しかし,そうした手に入れたい絶版となった名著は大概高額な値段で販売されており本日購入するだけの余裕はなかった. 何冊かあれば購入しようかと思っていた本はあるが今日はその本はなかった. 背中に背負っていたリュックサックを手前側に持ってきて狭い店内で他の人の邪魔になるべくならないように,気になる本があれば手に取って時間をついやした. 正直悔しかったのは先日高額で購入した物理の専門書が安く売られていたことである. 古い本はまずここにきて確かめるべきだった. 店に長居したので何か一冊でも買おうかと思ったが,今日はその気に慣れず, 店員が他のお客の接客をしている間にコソコソと店を後にした.
私は本よりも本屋が好きなのだと思う. 今はネットショッピングが発達し,本屋で本を買う人も,もっといえば紙の本を買う人も少なくなっているのではないだろうか. しかし,私にとっては何かお目当ての本が定まっていても本屋へ行き,その空気を味わいながら目的の本を探すのを楽しんでいる. その中で知らなかった本や気になる本を手に取る,手に取らなくてもさまざまなタイトルが印刷され,洗練されたデザインの背表紙が並んでいる姿を眺めている時間が何よりも贅沢に感じられる. その点今日は純度100%の本屋での時間というとても贅沢な買い物をしたのかもしれない. 次は是非何か購入したいと思う.
[編集記録]
2021.08.17. 公開