朱色の実り
長い間 暖めていた
淡い思いが実るように
細い枝にはまた今年も朱い果実が。
もう二度と戻らない時を
愛おしむように
甘く香る果実が思い出を蓄える。
*
夏のはじめに蒔いた粒が
花をつけるとその後には
幼い兄弟のような小さな莢が。
鈴なりに並んでいる、
思いが溢れるように。
日毎に見えないほどに
少しづつ膨らんでいく。
*
もうきっと還れない今日の
形見分けのように
苦く香る果実の思い出を携える。
人の心は変わるけれど
東からは月が昇り
いつまでも照らし出している
大切なことを。
大切な日々を。
(2021年10月19日〜28日)