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東京で失踪する魂
東京にいろんなものが溢れかえっているとしても
そいつらは決して俺のものでも君のものでもない、
まったくもう俺らの情熱のぬるさときたら
耳鳴りがいやんなるほどに谺する有様だ。
*
少なくともこの風ぐらいは俺らのものだろう?
こうやって自由にまだ吸ったりできるのだから。
俺たちに足りないものがあるのだとしたら
それはたぶんカネか、
それともカネじゃなく
新しい思想か?
人ごみのなかで君を見失うときみたいに
一瞬なんだ、
大切なものを失くしてしまうのは!
*
俺みたいに安定性の低い乗り物には
乗らないほうがたぶん賢いに決まっていると思うよ、
地獄のわきを他人のふりで通りすがる生き方もあるが
すすんで火に飛びこみ焼かれ息絶える人生もある。
結局のところ、いつだって選ぶのは自分自身で
不思議なことに他人には
実は何ひとつ決められはしないんだ。
誰もが歩いていく、
決して引き返すことのできない道を。
誰もが歩いていく、
たった一度だけ、
誰もがたった一度だけ。
とても簡単なことなんだ、
大事な一日を喪ってしまうのは。
たった一度だから価値があるんだ、
引き換えできない今日という一日は。
*
歩いていく、まだ俺たちは何も喪ってはいないのだ。
他の誰かには生きられないこの道を
誰もが一度だけ。
誰もが一度だけ。
(2005年7月23日〜2006年7月2日、2021年4月16〜17日加筆)