
おまえは昏い眼をしてる。
おまえの顔が歌っている、
傾く夕陽の光を浴びて
オレンジ色に光る鼻で
眩い天使の歌を奏でている。
おまえの形のいい薄眉や
つんと突き出たちいさな鼻、
つるんとしてまだ少女のような若さを見せる
すべすべしたおでこ。
ぼくにとってそれは全部
ひとつの芸術品のようなもの。
《永遠》が溶けていった海の青よりも
おまえは昏い眼をしてる。
*
おまえが横を向いた拍子に
折れそうなほどに細い首筋に
くっきり浮き出る静脈が
ピアノ線のように震えている。
おまえは薄眉をひそめ
ぼくの心を波立たせる《楽器》だ。
《永遠》が溶けていった海の青よりも
おまえは深い眼をしてる。
*
ぼくの心を締めつけるおまえの横顔を掠め
銀の天使が駆けぬける、
錆びれた弦のうえを妖精が走る、走る!
《永遠》が溶けていった海の青よりも
おまえが輝いてみえる。
*
おまえは頬杖をついて
鏡の奥で目を閉じて
ぼくの心を掻き鳴らす
痩せた首を左向きに傾げている天使だ!
長い足、黒い髪の毛、
細い腰、肩、痩せた腕、
ちいさな頭、そして何よりも
おまえは昏い眼をしてる。
おまえは昏い眼をしてる!
(1996年)