研究支援活動と紐形動物の多様性・分類学について~ブリッジフェロー波々伯部さんの活動紹介~
はじめまして、生物コミュニケーション大作戦ブリッジフェローの波々伯部です。
現在、私は東京大学大学院理学研究科博士課程3年で、自身の研究を進めながら高校生の皆さんの研究を研究アドバイス等のかたちで支援させていただいています。
研究支援活動について
高校生研究チームとは定期的にメンタリングをし、研究の方向性や進捗について話し合っています。
私が担当するキノコ研究チームは、今年6月の降水量が低かったことから調査が難航した場面もありましたが、臨機応変に対応して研究を進めていました。
高校生の皆さんの研究への熱意に私も日々刺激を受けています!
自身の研究について
ところで、皆さんは「紐形動物(ヒモムシ)」をご存知でしょうか?
ヒモムシは紐形動物門に属する無脊椎動物の仲間で、陸上、川辺や湖、地下水などの淡水域、潮上帯〜超深海といった様々な環境に生息しています。
基本的には底生性で自由生活を送っていますが、一部他の動物と共生/寄生関係をもつものが知られています(少しでも興味を持った方は拙著「ヒモムシ学入門」(オープンアクセス)を是非手にとってみてください!)。
ヒモムシに関しては国内外問わず、まだまだ研究が進んでおらず、「どのような種がどのような場所に、何種分布していて、それらはどのような名前で呼ばれ、グルーピングされるか」といった基本的な情報にも未知の部分が多く残されています。
私は、祖父母の実家の徳之島(鹿児島県)に夏に帰省し、磯場で遊ぶたびに図鑑で見たことがないような生き物に遭遇し、未だ明らかになっていない生き物の多様性に驚かされました。
生き物のかたちや生態の多様性・進化にも勿論興味があったのですが、この美しいニョロニョロした生き物たちについてそういった研究を進めていくためには、まずは「これらがどのような名前で呼ばれ、何の仲間に分類されるのか」といった分類学的な基本情報を整理しなければならないと感じました。
そこで、私は動物分類学をベースに形態・発生・進化と様々に研究を進めています。
実験室に篭って発生学的研究を進めるときもあれば、長期航海調査に参加して有人/無人潜水船を使った調査を行なうこともあります(プレスリリース:北西太平洋各地からニッポンネメルテス属のヒモムシ10新種を発見)。
好きな動物を採集して、赴くままに調べ物をし研究を進めることはとても楽しいことです。
目の前の生き物がナニモノなのかを調べるだけでも、次々にワクワクした気持ちや新たな疑問が浮かんでくるものです。
もし機会があれば、野外に行ってぱっと見てよく分からない生き物を手にとってみて、それがどのような形態・生態学的特徴をもっていて何の仲間と同定することができるのか気の向くままに調べてみてはいかがでしょうか?
執筆:ブリッジフェロー 波々伯部