絶望感な滑舌
滑舌が悪い。口周りが緩く、歳を取るにつれて何を言っているか聞き取ってもらえなくなってきた。同僚に「髪の毛切りました?」と言ったところ、「コミュ力消えました?」と、これ以上なく無礼な言葉を発していると間違えられた。これは非常にマズい。いずれ三四郎の小宮のような絶望的な滑舌になってしまう。ドルジは滑舌には歯並びが関係していると聞いたことがある。確かに心なしか、昔に比べて前歯が前にせり出てきているように感じる。そこでドルジは考えた。常日頃から舌で前歯を押し戻せば、矯正のような役割をしてくれるのではないかと。これは天才的な発想だ。思いついたら即実行、口を動かしていない間は常に舌で前歯を押し戻す。そんな日を2、3日過ごした所で、妻から「人を小馬鹿にしているのか」と激怒された。どうやらはたから見ていると、志村けんのアイーンの顔と同じように見えるらしい。どうやらドルジはこの数日間アイーンの顔で日常生活を送っていたようだ。確かに同僚達もあまりドルジに話しかけてくれない日々だった気がする。滑舌を取るかアイーンを取るか、究極の2択である。歯医者に行くという簡単な選択をどうしても出来ない面倒くさがりなドルジなのでした。