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2022年 小学生部門 優秀賞・ニャーロウ賞

◎優秀賞 川上 莉央さん(小6)

読んだ本――『世界で一番の贈りもの』 マイケル・モーパーゴ作 マイケル・フォアマン絵 佐藤見果夢訳 評論社

【作品】
「クリスマスの贈りもの」

 私がこの本を手にとったきっかけは、あるバンドの曲でした。その曲でクリスマス休戦について興味を持った私は、学校の図書室で平和についての本を探していたところ、この本に出会いました。
 この本のタイトルは『世界で一番の贈りもの』です。私はこの本の中で二つの“世界で一番の贈りもの”を見つけました。
 一つ目は第一次世界大戦中のイギリスとドイツ両軍の間にもたらされたクリスマス休戦です。この休戦は両軍で定めたわけではなく、クリスマスを一緒に祝おうという気持ちが通じあって生まれたものです。もし誰か一人でも攻げきしていたらなかったであろう、奇跡のような出来事です。今はそれぞれの国の兵士として戦いの最前線にいても、元は教師や、楽団で楽器を演奏していた普通の市民。それぞれに大切にしている故郷や家族がいます。そんな人達が互いに殺し合い、自分自身もいつ死ぬか分からないという肉体的にも精神的にも苦しくて厳しい状況の中で、武器ではなく手をさしのべ暖かい握手を交わし、笑い合い話し合いお酒や食べ物を分け合う平和な時間。その時代に出会っていなければもっと違う関係になっていたかもしれない。そんな人達がなぜ戦わなければいけなかったのか。お互いに憎んだり恨んだりしているわけではないのに。戦争は改めて不幸なことだと考えさせられました。
 残念ながら幸せな時間は長くは続きませんでした。どちらの軍の兵士も、戦争が終わって早く家族のもとに帰れるよう願っていることは分かっているのに、どうしようもありませんでした。悲しいけれど、それが戦争なのだと思います。ですが、つかの間の思いやりに満ちた心あたたまる時間はイギリス・ドイツ両軍の兵士にとって“世界で一番の贈り物”だったにちがいないと思います。
 私が見つけたもう一つの“世界で一番の贈りもの”は『ぼく』からイギリス兵ジムの妻コニーに届けられた手紙です。この手紙は、『ぼく』ががらくた屋から買ったおんぼろの引き出しから見つけたもので、ジムというイギリス兵が妻のコニーに宛てて書いた、最後の手紙でした。その手紙には「ジムからの最後の手紙。千九百十五年一月二十五日受取。私とともに埋そうのこと」というメモがつけられていました。その手紙をコニーに届けると決めた『ぼく』はクリスマスの日に手紙に書いてある住所に向かいます。コニーが生きているか、そこにいるかわからないのに、いてもたってもいられなかったんだと思います。コニーは百才をこえ少々もうろくして施設にいましたが、『ぼく』が手紙を届けると顔中が喜びでかがやきはじめました。そして涙を流しながら『ぼく』に向かって『ジム』と語りかけます。『ぼく』をジムとまちがえてはいるけれど、クリスマスの日に手紙とともに自分のもとにジム(ぼく)が帰ってきてくれたことは、たとえそれが本人でなくても、コニーにとって“世界で一番の贈り物”だったと私は思います。
 今、私がこの感想文を書いている間もウクライナでは激しい戦いが続いています。一刻も早くロシア・ウクライナ両軍、両国民に、“世界で一番の贈り物”が届けられることを強く願っています。ジムのように大切な家族の元に帰れない人がこれ以上増えないように、そしてコニーのように大切な人の帰りを待ち続ける人がいないように。
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◎優秀賞 古市 湊大さん(小4)

読んだ本――『おおきな木』 シェル・シルヴァスタイン作 村上春樹訳 あすなろ書房

【作品】
「考えることが好きな人へ」

 ぼくはこの本と図書館で出会いました。かりてみて、読んでみたらとてもいい話だなと思いました。何度も読んでみたいと思い、買うことにしました。その後、何度も読んでいます。
 この作者、シェル・シルヴァスタインさんはとてもいい話を作ったと思いました。「なんでだろう」と読んだ人をなやませるところがいいなと思います。
 この本は、いつも木といっしょに遊んでいた少年が大好きだった木を切ってしまうお話です。少年は小さいころから木の所に来て、お話したり、お昼ねをしたり、かくれんぼをしたり、いろいろなことをして木と一しょにすごしてきました。でもある日、少年は、自分の家がほしいと木に言いました。木は、「家がほしいのならば、わたしの木の枝を切って作りなさい」と言いました。そして少年は言われた通りにしました。船を作りたいと少年が言いました。少年は言われた通りにして木を切りました。
 お話が終わった後、その後少年はどうなったのか、木はどうなったのか、気になります。ふしぎなことがいっぱいあります。なぜ少年は木の言う通りにしたのか。これの続きがあるのかしら?と思います。表紙にあるようにりんごを取って町に売るところの話がないのはなぜだろう。作ってもよかったのではないかなと思ったりします。
 心に残ったのは少年が木のみきを切ってしまうところです。このことがきっかけとなり、少年は大事な物を失ってしまったのではないかと思いました。他にもいっぱいありますが、特に印象的な場面が少年が木を切ってしまったところでした。
 これを読んでぼくだったら、大事な物は残すけれど、少年は大事なものはどうでもいいみたいな感じだと思いました。少年はなぜ木を切ってしまったのか今でもふしぎに思います。
 ぼくはこの本を考えることが好きな人に読んでもらいたいと思います。ぼくにもわからないことがたくさんあったので、いっしょに考えてくれるとうれしいです。
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◎優秀賞 竹内 一路さん(小1)

読んだ本――『ぺちゃんこスタンレー』 ジェフ・ブラウン作 トミー・ウンゲラー絵 さくまゆみこ訳 あすなろ書房

【作品】
「ぼくもぺちゃんこスタンレー」

 この本は、ぺちゃんこになったスタンレーが、そとをぼうけんしたり、おてつだいしたりするおはなしです。
 スタンレーが、ぺちゃんこになったあと、くうき入れに口をつけてからだにくうきをいれて、もとのかたちにふくらんだところがおもしろかったです。でも、ぼくは、スタンレーがぺちゃんこのままで、もとにもどらなくてもたのしそうだとおもいました。
 スタンレーは、ぺちゃんこじゃないとできないことができるようになったから、もし、ぼくがスタンレーだったら、まずは、よる、ねるじかんに、本のページのあいだにはさまって、ずっと本をよんでいたいです。どうしてかというと、ぼくは、本がだいだいだいすきなのに、いつも八じになると、おかあさんから「はやくねなさい。」といわれて、まだつづきがよみたくても、ねなくちゃいけないので、すごくざんねんだからです。
 それから、大きいふうとうに入って、とおくにすんでいるおじいちゃんたちのところにおくってもらいたいです。そうすれば、もしでんしゃがおくれてもおうちにいけるし、おじいちゃんたちといっしょに、かべにくっついてかくれんぼしたり、土にもぐってかせきをみつけたりできるからです。
 いえにかえってきたら、かべにくっついてささっとうごいてかぞくをびっくりさせたり、テレビやパソコンがこわれたらその中に入ってどこがこわれているかしらべて、なおしてあげたいです。それから、一人でねるのはこわいから、こっそりおかあさんのベッドに入っていっしょにねたいです。
 ぺちゃんこになったら、だれかにふみつぶされちゃうかもしれないから、ずっとぺちゃんこのままはちょっとしんぱいだけど、いちどでもいいからぺちゃんこになってみたいです。
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◎ニャーロウ賞 はる さん(小2)

読んだ本――『さかさ町』 F.エマーソン・アンドリュース作 ルイス・スロボドキン絵 小宮由訳 岩波書店

【作品】
「わすれよ科」

 「ぜんぶのことがサカサマの町があったらどんなに楽しいだろう!」この本を読んだぼくの感想です。この本に出てくる町の文字はぜんぶサカサマで書いてあって、家もサカサマにたっていて、車も後ろむきにすすみます。大人があそんでいて、子どもがはたらいています。お店では店員さんがお金をはらって、おきゃくさんはお金をはらわずにしょう品とお金をうけとってかえります。そんなふしぎな町のお話です。
 ぼくがこの本に教わったことは、たまにはわすれることも大事だということです。本の中で、学校のじゅぎょうに、わすれよ科という教科があります。そこでは先生が、いやなこととかしっぱいをわすれて前向きになったら今よりもっとしあわせがふえるかもしれないと教えていました。ぼくはそんなことを今まで考えたこともありませんでした。でもとてもよい考えだと思いました。たとえばぼくだったら、習っているサッカーでシュートをはずしちゃったことがあって、くやしい気持ちになったことがあります。けれどそのいやな気持ちをわすれてまたがんばったらゴールを決めることができて、うれしい気持ちがふえるということだなと思いました。いつもの学校や家では、わすれましょうとは習わないけど、わすれることってだいじなんだなと気付きました。
 当たり前をサカサマにしても、おもしろいこととかためになることがあるとわかったし、いつもの当たり前の中でもおもしろいことはあるから、ぼくの今までの当たり前と、さかさ町の当たり前を合体させたら、毎日がもっとおもしろくなるんじゃないかと思いました。これからは何かがあった時に、ここがさかさ町だったらどうなるんだろうなあと考えながら生活してみようかなって思います。

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(注:応募者の作文は原則としてそのまま掲載していますが、表記ミスと思われるものを一部修正している場合があります。――読書探偵作文コンクール事務局)

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