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地蔵菩薩誕生

1.信心深い娘

遠い遠い昔のこと。仏に祈りをささげる娘がいました。

娘は仏の慈悲を信じて、敬い、一日も礼拝を忘れることはありませんでした。娘には母親がいましたが、常日頃から娘の影響で、正しいものの見方をしていましたが、仏への信仰を強く持たないうちに、亡くなってしまいました。

そして無間地獄に落ちてしまいました。

もしかしたらお母さんは、無間地獄に落ちてしまったかもしれない。

娘は母親を仏道へ導いて救えなかったことを悔いました。娘は残された財産でお寺を建立して、「覚華定自在王如来」の像を安置しました。

そして、母の心が穏やかなることを祈りました。

そして祈りながら、聞いてみました。

「覚華定自在王如来さま。仏はすべてを見通すことができるとお聞きしております。どうかお願いでございます。私の母はどこで何をしているのでしょうか?どうか教えてください」

娘は一生懸命祈りました。

2.声が聞こえる

多くの日が経ったある日、娘の耳に荘重な声が響き渡ってきました。

「娘よ。泣くのはおよしなさい。いたずらに悲しんでいるばかりではいけません。私が母親の居場所を教えてあげるから、自分で確かめてきなさい。」

娘は思わず居ずまいを正して、もう一度尋ねました。

「あなたはどなたなのですか?」

「私は入滅した覚華定自在王如来です。あなたの母を思う心に感じ入り、こうして声をかけているのです。」

その声が終わった瞬間、娘は激しい体の痛みを感じて気を失いました。

しばらくして意識を取り戻すと空中へ向かって叫びました。

「お願いです。どうか教えてください。死ねば母のもとに行けるなら、私は死んででも母の居所を知りたいと思っているのです。」

「案ずることはない。」


空中の仏の声は凛と響きました。

「このまま家に帰りなさい。そして座って静かに私の名を念じなさい。そうすれば自ずから母親の居場所がわかるでしょう。」

娘は手を合わせて深々と頭を下げ、指示された通り家へ帰って、仏を念じ続けました。そして一昼夜が過ぎました。

3.母を訪ねてそれこそ三千里

 ふと気が付くと、娘は海辺に立っていました。なにげなく見るとその海はぐらぐらと煮えたぎっていて、海面にはおびただしい数の男女が浮き沈みしています。

そして鋼鉄のような体の怪獣たちが、それらの体をつかんで貪り食っています。鋭い歯で頭からかみ砕かれるとき、すさまじい音とともに鮮血がほとばしり出ます。とても正視できる光景ではありませんでした。

しかし、不思議なことに娘には少しの恐怖心もありませんでした。

なぜなら、しっかりと仏の教えを念じていたからです。娘の瞳は酸鼻を極める地獄のありさまをはっきりととらえていました。

そこに一人の鬼王が近づいてきました。

4.親切な鬼王 無毒

鬼王の名前は無毒と言いました。

無毒は娘に恭(うやうや)しく頭を下げて声を掛けました。

「菩薩よ。どうしてこのようなところにお越しになったのですか?」

娘は自分が菩薩と呼ばれていることに、少しの不自然さも感じずに

無毒に問い返しました。

「ここはどこなのですか?」

無毒は答えました。

「ここは鉄囲山の西側にある最初の海でございます。生きている間に悪を重ね、死んで四十九日たっても残された人たちに供養してもらえない者は、この海を渡って地獄に行かなければならないのです。ご覧のように怪獣にかみ殺されてもかみ殺されても生き返り、もだえ苦しみながら進まなければなりません。果てしないこの大海原のその向こうがまた海で、そこの苦しみは今の倍になり、さらに海があって第二の海の倍の苦しみを受けるのです。」

「では、地獄はどこにあるのですか?」
「はい、その三つの海の向こうに無数の地獄が用意されています。」

「私はその地獄を一つ一つ訪ねて歩いていきます。」

「残念ながら、地獄に行けるのは仏の威神力を持つものと罪人だけなのです。あなたにはその資格がございません。」

無毒は事務的な口調で言いました。

5.やはり優しい無毒

「でも行かなければならないのです。私の母がそこにいるはずなのです。」

娘は尋ねました。

「お母様の名前は何とおっしゃいますか?」

無毒は娘の顔を覗き込むようにして尋ねました。

「えい てつ り と申します。」

娘の答えを聞くと無毒はその場に身をかがめて合掌して言いました。

「どうぞ安心しておかえりください。その方は確かにここにいらっしゃいましたが、三日前に天界に生まれ変わっていかれました。なぜなら、その方の娘があふれんばかりの孝心をもち、ひたすら「覚華定自在王如来」を礼拝し、供養し、布施した功徳なのです。それだけではありません。その方と一緒に同じ地獄で苦しみを受けていたものが皆、共に救われていったのでございます。」

無毒はそう言って再び身をかがめ合掌をささげました。

6.帰ってきた娘

次の瞬間、まばたきするほどの間に娘は元の世界に帰っていました。

娘は「覚華定自在王如来」の像にぬかずいて誓願を立てました。

「仏よ。私は酸鼻を極める地獄を見てまいりました。願わくは私は未来尽くすまで、母のように皆を救いたいとおもいます。」
こうして娘は、地獄に行くこともお釈迦様に許され、

地蔵菩薩になりました。

7.地蔵菩薩様のスペシャルパワー

お釈迦様の弟子で修行されている方を「菩薩様」と言いますが、ほかの菩薩様にない力を地蔵菩薩様は持っています。

それは、私たち人間の住んでいる地獄を見てくることができるということです。ほかの菩薩さまは極楽にいるので、実際の人間界や地獄がどんな様子なのかを知らないところがあります。

会議室にずっといると、どんな場所でみんながいるところでどんなことが起こっているのかが分からないということは、映画でなくてもよくあることです。

ですから、ほかの菩薩様は地蔵菩薩に、地獄ってどんな様子なの?
と聞くわけです。そして他の菩薩様が地蔵菩薩様を一目置いている訳は、修行が進むと地獄へ行って皆を救ってくるからです。

8.私もあなたにも地蔵菩薩が見ていてくれています

そういえば私がつらい時、なかなか気づかないけれど、そっと優しく見つめて心配してくれる人、遠くで元気に働けているだろうかと 思ってくれているお母さんとか お地蔵様みたいな人が必ずいますよね。間違いなく地蔵菩薩様の化身されたものでしょう。






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