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【ファンタジー】幾千年の声を聞く(青羽悠さん)【中央公論新社】

壮大な世界にいる、矮小な人間たちの物語

◆あらすじ

この世界にはとても大きな木がある。その木は人々にとって特別な感情を与えてきた。
だがその木に触れた人々は様々な考えを持った。
宗教の長となった女の子や、外の国からやってきたとある学者、貧しい運び屋の青年、天文台に勤める天文学者。
そんな、異常な大きさの[木]に触れた矮小な人間の物語。

◆感想

個人的にとにかく世界観がドンピシャな作品(あと単純にカバーイラストがめちゃくちゃ好き)。
牧草と木と人間、という少しクラシックなファンタジーの雰囲気から、論理素子や監視社会といったSFっぽさのある雰囲気までを網羅した、世界観に浸りたい人にはうってつけの小説です。
短編オムニバス系で各章ごとに主軸のキャラが異なるので、全編を通した物語や各キャラクターの感情の変化というものは少なく、ミステリーなどのような"読み応え"というものはあまり大きくない。
ただしっかりとそのファンタジー世界の人間というものを感じられ、さもそこの人間に自分がなったかのような丁寧な描写に、読んでいて本当にわくわくしながら読み進められる作品でした。