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17限目:世界インフレの謎(速読術講座:経済編)

食品の値上げラッシュが続きそうです。皆様の生活にも直接関係ある話題ですね( ;∀;)

上場する主要食品メーカー105社が実施した(2022年)10月の品目数は約7000に上っていて、11~12月分の予定も含めると、年内の値上げ予定品目数は累計2万品目を超えます。

バブル崩壊後の30年を見ても、異例な規模での値上げが行われています。

日経新聞10月21日より

さて、色々なニュースが出ているなか、
●日本経済(物価)に何が起きているのだろうか?
●今後、物価はどう変化するのだろうか?(更なる値上げが続くのか)
●物価って、そもそも政府がコントロールできるのか?

という疑問にわかりやすく答えてくれる旬な本を紹介します。

新聞記事・雑誌ばかり読んでいては、経済学の知識を活用した大きな方向性を見失うため、基礎的な新書を読んで知識を得て、理解を深めることで、新聞記事・雑誌を速読できるようになれます。

著者は、経済学者で物価の専門家で、非常に文章がわかりやすいです。
それでは、以下に簡単に要約します。


なぜ世界はデフレだったのか?

最近まで、物価が上がらない低インフレでした。特に、日本はこの30年間物価が上がらないデフレーション(デフレ)に苦しんでいました。

デフレの原因は、①グローバリゼーション(企業は少しでも安く生産できる海外に生産拠点を移動させるため、製品価格が安くなる)、②少子高齢化(高齢者が将来の所得減少に備えて、貯蓄に走り消費を減らす)、③技術革新の頭打ちと生産性の伸びの停滞(GAFAみないな情報通信技術分野やバイオテックがありますが、経済全体では生産性は伸びていない)と言われています。

このため、2008年のリーマンショック以降からの低インフレは、その後も長く続くと言われていました。

なぜ世界は急にインフレになったのか?

インフレは、ロシアのウクライナ侵攻で始まったのではない!!!(インフレ率を1.5%ポイント引き上げる効果はあり)

実は、ウクライナ戦争の前の2021年頃から始まっていました( ゚Д゚)

これは、新型コロナウイルスについての人々の理解が進み、対応がはじまり、パンデミックが一旦落ち着いてきた頃でした。

専門家によるインフレ予測

パンデミックの下で、どこで・誰が・何をしたからインフレが起こったのか?

■消費者
消費者は、人混みを避けたり、他社との物理的な接触を避けたりというように、生活様式が変化しています。これに伴い、どこで何を消費するかも変化し、消費が集中するようになった品目では生産が追い付かず、なかでもモノの価格が上昇しています。

モノの価格が上昇しています。

■労働者
2年間のコロナ禍での巣ごもりを終え、労働者が労働を再開していません。

リモートでの仕事に慣れてしまった労働者は工場やオフィスに戻ることを拒んでいます。出勤が義務になるぐらいなら職を変えようと考える若者や、それならば早めにリタイアしようと考えるシニアが出ています。

働き手が減少しています。

■企業
企業の海外拠点から製品をスムーズに輸送できなくなってしまったため、部品調達がタイムリーにできずに生産活動が停滞してしまっている(例:半導体の生産・供給不足)。

モノの生産・供給が減少しています。

■同期の発生
通常、人々の経済行動は同期しません(例:みんながいっせいにiPhone14を欲しがらない。iPhone13の保有者は必要なく、iPhone8の保有者は買い替える)。しかし、コロナは、世界を同じタイミングで襲っているため、世界中に人が同じようなタイミングでStay Homeして、同じようなタイミングで感染封じ込めに成功しています。この同期の発生により、個人の行動がいっせいに起こり、大きなうねりとして世界経済にインパクトを及ぼしています。

今回のインフレは、需要が多いのが原因か、供給が少ないのが原因か?

現在のインフレは、経済全体の需要が、供給を大きく上回るという不均衡により発生しています。

以上をまとめた図が以下です。

パンデミックの後遺症が引き起こすインフレ

さて、誰が今回のインフレを解決してくれるのか?
政府か、中央銀行か?

米欧の中央銀行は、インフレ対策の利上げを行っています。

これは、需要が過剰になったときに起こるインフレに効果があります(例:住宅ローン金利を上げると、人々の新築住宅の購入意欲はなくなり、消費が抑えられる)

しかし、世界は、今、供給不足のインフレに直面しています。
この課題には、本来、中央銀行は対処できません

現在の米欧の中央銀行の金融引き締めは、金利引上げと貨幣量の絞り込みにより需要を冷やすことですので、減少している供給の水準まで、強制的に人々の購買意欲を落とすことで需要を減らすことです。

つまり、「縮小均衡」そのものです。

この過程で、GDPが減少し、景気後退がやってきて、失業率が上がります。

つまり、誰も解決できないのです。

それでは、日本はどうすればいいのか? 米欧と比較して特有の課題があるのか?

日本は、過去30年間デフレと言われているように、日本特有の「賃金・物価スパイラル」に陥ってきました。

つまり、
①企業は毎年価格を据え置く(商品の店頭価格は変化無し)➡②生活者の生計費は前年と変わらない➡③労働者は賃上げなしでも前年並みの生活を維持できる➡④人件費は変わらず企業は価格転嫁の必要なし➡①

というスパイラルです。

さて、この課題が解決できるのか?

これには、以下のようなスパイラルにすることが必要です。



最近の物価上昇、米欧の中央銀行の利上げ政策、円安等の経済トピックに興味がある方は、是非ともご覧ください(*´▽`*)

See you soon.

次回は18限目です!





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