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コヒブレ27回目:キャリア官僚のお仕事Part11(霞が関の省庁ランキング、内閣法制局、法務省民事局、法律作成)

今回は、久々に霞が関全体の組織紹介です。

今回の記事と関連するのは、以下のPart1、Part3です。

5大省庁

さて、過去の記事で、まずは5大省庁を紹介してきました。
※まだ、警察庁の紹介ができていませんが、、、

5大省庁は、権限の大きさにより、5大(Big5)と言われてきました。

財務省→予算編成権
経産省→民間企業と密接な関係(エネルギー、特許、輸出管理に権限あり)
総務省自治→地方自治権
警察庁→警察権
外務省→条約解釈権、外交特権

そして、これらの省庁は、

財務省=三菱商事、JR東海
経産省=三井物産、ボストンコンサルティンググループ
総務省自治=地方豪族、知事
警察庁=三菱地所、三井不動産
外務省=JICA、国連機関

というぐらい組織風土が違いました。

霞ヶ関の地図

5大省庁以外

さて、5大省庁以外のどういう位置づけになっているのか解説します。
改めて、1府11省庁1庁は(国家公安員会の傘下に警察庁があります)以下です。

霞が関の省庁ランキング

人気や権限の大きさを基準にすると、以下の順になります。
国家公務員試験の総合職試験で入れる省庁です。
※私の主観ではなく、霞が関界隈で良く言われています!

桐島作成(霞ヶ関で人口に膾炙されている)

3つの階層別に2025年の総合職の採用者予定者数を()内で記します。

第1階層:財務省(本省25)、経産省(56)、総務省自治(30ぐらいと予想)、警察庁(35)、外務省(36)

第2階層内閣府(16)、防衛省(35)、総務省テレコム(20ぐらいと予想)、国交省(建設、運輸合わせて137)、厚労省(厚生、労働合わせて63)

第3階層文科省(31)、農水省(127)、環境省(30)、法務省(民事局7、矯正局23、保護局10、入管庁10)、会計検査院(5)、人事院(8)

※総務省は、自治+テレコム+行政管理あわせて57を予定。
※内閣府は、人によっては第3階層と言う方もいますが、採用人数の少なさと人気の兼ね合いから、第2階層にしています。権限の大きさの点では、第3階層です。

事務官と技官の違い

省庁の面接を受けるためには、国家公務員試験を受験しますが、試験区分毎(法文系、理工系、農学系など)に枠が決まっている省庁もあるので、注意が必要です。

法文系の試験区分で入省する人を、事務官
理工系、農学系で入省する人を、技官と言います。

大学で理系学部でも、経済区分で受験すれば事務官になります(理系→経済職→事務官は多いです)

例えば、農水省は、事務官を30人、技官を97人採用します。

つまり、大学での専攻が理系の方には、国交省や農水省などの技官の採用が多い省庁が人気です。

例えば、国交省は事務官のなかでは不人気ですが、技官のなかでは人気省庁です。事務官と技官によって、人気に差がある省庁もあります。

各省別の2025年の総合職採用数



隠れた権力(内閣法制局、法務省の民事局と刑事局)

霞が関には、あまり知られていない隠れた権力が存在します。

それが、内閣法制局と法務省の民事局と刑事局です。図にすると、以下になります。


内閣法制局

内閣法制局は、霞が関の1府11省1庁が作成する法律(議員立法と区別するため、閣法(かくほう)と呼ばれます)の審査権限を有しています。

霞が関の最も大きな重要な仕事は、法律作成、法律改正です。そのため、法制局は超重要省庁です。

法律=内閣法制局、予算=財務省という立ち位置です。

内閣法制局は新卒での採用は実施していないので、入省することはできません。各省からの出向者で構成されています。

入省×、出向◯

HPで公開されているのが以下の図ですが、わかりにくいですね!

そこで、赤字でどの省庁からの出向者か、第二部、第三部、第四部が何を担当しているのか、記載します。なお、第一部は憲法を担当しています。

長官、第一部部長は経産省からの出向者です。

次長は検察庁、第二部部長は農水省、第三部は金融庁(大蔵省に入省)、第四部は総務省(自治)からの出向者です。

内閣法制局の人事にも、5大省庁の強さが発揮されています。

少し興味深い点としては、第二部は農水省の法律は扱わないのに、第二部部長は農水省出身ということです。部下に、担当省庁出身(文科省、国交省、防衛省など)の方がいるのでしょう♪

第四部も総務省の法律は扱いませんが、総務省出身者が部長です。

各省庁で法律改正に長らく従事した方で、法律が得意な方が内閣法制局に出向になります。


法務省の民事局と刑事局

次に、法務省の民事局と刑事局です。
ここには、司法試験に合格して裁判官や検事になった人たちが沢山います。

司法試験に合格すると、法曹三者といって、裁判官か検事か弁護士になりますが、そのなかの裁判官や検事が出向しています。

民事局は民法、刑事局は刑法を所管しているため、霞が関の1府11省1庁が作成する法律が、民法や刑法に抵触する時に、事前に民事局や刑事局との調整が必要になります。

調整した後に、内閣法制局に持ち来なければいけない、という決まりがあります。

法務省の組織図で、以下の赤枠囲いが民事局と刑事局です。

法務省は、国家公務員総合職では、法務省(民事局7、矯正局23、保護局10、入管庁10)という採用者数ですが、省内の主要ポストは、ほとんど裁判官や検察出身者で独占されています。

具体例(法律作成の際の民法との関係整理)

例えば、環境省や経産省が「排出量取引制度」(温室効果ガスの市場での売買取引の仕組み)を作る際に、どのような制度を作り、どのような法律にするかを官僚が検討します。

その難しさを知ってもらうための資料が以下です。

https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/gx_implementation/pdf/004_03_00.pdf

排出量取引制度は、民法(物件)、民事執行法、破産法と関係します。

排出量取引制度では、新制度を作る時に、民間企業にヒアリングして、適切な市場ができる制度設計をした後に、それを法律という形に落としこまなければいけません。

その際に、やたらめったら、色々な法律との関係に注意しなければいけないのです。

そして、民法が関連するため、ある程度法律の条文が出来上がった段階で、法務省の民事局の担当者にも相談しなければいけないのです。

上記の資料の民法に関連する部分のみを抜粋しますが、難しいですね、、、

排出量取引制度において特に検討すべき事項
ア 民法(物権)に関する事項
⚫ 排出枠を財産権としての性質を有するものと考える場合、原則として排出枠も担保権の客体となる。温対法においては、算定割当量に対する質権の設定を明文で禁止しているところ、排出枠について質権の設定を認めるか否かが問題となる。
⚫ 温対法において質権設定が禁止された背景には、京都クレジットについて、国際的な議論の成熟を待つ必要があり、日本だけが質権設定を認めるわけにはいかないという事情があった。他方で、排出枠は、国際的に流通することは想定されておらず、日本国内で完結するものであることから、上記のような禁止の背景が必ずしも妥当しない。
⚫ 他方、排出枠に対する質権の設定を認めるためには、質権設定された排出枠を他の排出枠から区別するため、登録簿上に質入口座のような設定・対抗要件具備制度を設けるといった措置が必要になると考えられる。そのため、質権設定を認めることによりシステム上の負荷が増大し、行政コストが増加することを踏まえ、排出枠への質権設定に対する需要との関係で、必要性相当性を慎重に検討する必要があると考えられる。
⚫ また、排出枠については、限られた期間内での償却を目的とするものであるから、質権設定のニーズは高くないのではないかと考えられる点や、質権設定を認めることにより流通が阻害され得るといった点についても指摘がなされている。
⚫ 排出枠については、第三者への移転が可能であるため、譲渡担保の設定は可能であると考えられる。排出枠に対する質権の設定を禁止した場合でも、譲渡担保の方法によ り担保権の設定が可能であることから、財産権の内容として一定の合理性が認められると考えられる。もっとも、担保法制の見直しに関する法制審の議論の中では、譲渡担保に関する動産・債権譲渡登記制度の見直しが検討されているところ、排出枠に対する譲渡担保についても、登録簿の記録上何らかの手当を検討する必要がないかが問題となる。また、譲渡担保についてかかる手当を行う場合には、質権設定と同様の問題が生じるところ、質権についてのみ禁止することに合理性が認められるかという点についても、検討が必要になると考えられる。

温暖化ガスの排出権取引制度がなければ、民間事業者をこれを活用したビジネスをできません。

このケースでは、霞が関が法律を作成→国会で審議→法律成立→温暖化ガスの排出権取引制度の市場ができる→民間企業が新たに参入して新たなビジネスができあがる、という形で、非常に大きな影響を日本経済に及ぼします。

今回は霞ヶ関ランキングと内閣法制局、法務省民事局、刑事局の解説でした。

手前味噌ですが、ここまで詳しく解説した記事はないと思います!!!



今回の記事を通して、法律改正などの霞ヶ関での仕事内容に興味を持たれた方は以下を参照下さい。


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