⑲ミャンマーの教育制度
ミャンマー人に日本の教育制度の講義を何回かするなかで、ミャンマー人の教育制度を理解していないことに気づいたので、学びました。
ミャンマーの学年と大学
そもそも、ミャンマーでは、大学入学時の年齢は17歳です。
小学校1年生=Grade1(6歳)です。小学校が5年間、中学校が4年間、高校が2年間です。
高校2年生=Grade11の時に、高校卒業試験(=セーダン試験)があり、1発勝負で大学が決まります。
スライドの右の大学が有名大学で、これらは、教育省から独立しています。これ以外の大学は、全ての人事権・予算権限が教育省に握られています。
セーダン試験(高校卒業試験)
大学毎に試験はありません。毎年3月に実施されるセーダン試験(日本でいえば、センター試験=大学入学共通テスト)1発で、人生が決まります。全科目それぞれ100点で、40点以上を取ってしまうと、浪人もできない仕組みです。
セーダン試験に合格すること=高校の卒業資格を得ることです。
日本は良い大学に行きたければ、浪人が簡単にできるので、恵まれています。
点数の高い人が、上位の大学に行ける仕組みです。
これは、イギリス植民地時代の統治の影響により、成績優秀者を選抜することに重点が置かれているためです。
高校では、理系と文系にわかれます。共通科目は、英語、数学、国語です。
理系は、化学、物理、生物が必須。文系は、経済学、地理、歴史が必須です。高校の理系クラスに必要な化学、物理、生物は英語で授業がおこなわれます。
そのため、理系学生の方が英語が得意な人が多いのです。
人気は、IT大学、医科大学、外国語大学のような実用的なスキルが身に着く大学です。
上位の大学にいかなければ、就職先はありません!上位以外の大学生は、親のコネを使うか、レストランやアパレル店の店員になるしかありません。
セーダン試験600点満点で、上位から
●Yangon Technological Universityは男性500点、女性504点
●Institute of Medicineは男性490点、女性508点
●University of Foreign Language(英語)は492点
が必要です。女性の方が点数を取る傾向にあるため、最低点も高くなっているのが特徴です。
試験日程
2023年の試験日程は、3月8日:国語、9日:英語、10日:数学、13日:化学、14日:物理、15日:生物(ここまでで理系学生は終了)、15日:経済学、16日:地理、17日:歴史という順番です。
このため、途中まで試験を受けて、浪人したいと思えば、他の科目を受けなければ、浪人が可能です(各科目最低40点が必要なので)。
2023年のセーダン試験(高校卒業試験)の様子
2023年の受験者数は、約16万人でした。2022年は、約28万人でした。
2019年までは、例年の受験者数は90万人だったようです。
人気の語学@外国語大学
ちなみに、トップ学生が行く、ヤンゴン外国語大学、マンダレー外国語大学のセーダン試験で必要な点数を見ると、英語学科がトップで、その次が日本語学科です。
中国、韓国、フランス語、タイ語、ドイツ語、ロシア語という順番で人気なので、ミャンマーで、日本語の人気が高いことがわかります。
大学の時間割
大学の時間割は、高校生のような時間割です。教室から一切動かずに、先生がくる仕組みです。
科目も自由に取れません。そのため、多くのミャンマー人は、日本の大学に入学してから、仕組みが全く違って、驚くようです。
家から、大学行きの乗り合いバスが出ていて、帰りも乗り合いバスで帰宅するため、部活やアルバイトはほぼ存在しません。大学は2学期制です。
そのため、日本の大学に進学したミャンマー人のなかには、友達作りに苦労するケースが多いです。ミャンマーでは、部活やアルバイトの習慣がなく、大学のクラスというのがコミュニティになるためです。
大学の場所(不便な郊外)
大学の場所は、1988年の民主化運動の契機が大学の学生によるものだったため、その後、政府が大学を市内中心部から郊外へ移動させました。そのため、多くの大学は、不便な郊外にあります。
例えば、学生数が多いダゴン大学は、市内から1時間半~2時間かかります。
市内にあるのは、セーダン試験で上位を占める、一部の優秀な大学のみです。これらの大学の学生は、ほとんどが、ヤンゴン中心部に住んでいて、英才教育を受けた人ばかりです。
そのため、他の大学の学生から、上から目線、いつも威張ってばかり、鼻持ちならないと言われています。
このような形で、ミャンマーの大学と、日本の大学は仕組みが全く違います。
日本では、基本的に大学に入っておけば、就職先はありますが、ミャンマーでは、もともと就職先は限られているため、大学に行ける人もごく一部で限られていますし、行っても就職できるとは限らないという厳しい環境です。
以上、簡単ですが、ミャンマーの教育事情です。