コヒブレ18回目:国家公務員(キャリア官僚)のお仕事Part5(外務省の紹介)
前回17回目に続き、Part5です。
中途の方向けの国家公務員、霞ヶ関の説明です。
今回は、私がわかる範囲で、各省紹介をします。まず、5大省庁(以下の赤囲い)を紹介します。
各省庁の働きやすさ
Openworkが23年7月26日に公表した、進みゆく学生の”霞ヶ関離れ”、実際に働く職員のリアルな声と提言、を参照します。
1府11省をピックアップし、2023年7月時点での8つの評価項目を分析して、働きやすさを示したスコアがあります。
(1府11省は、内閣府、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省です)
この分析によれば、総合評価で官公庁平均(3.05)を上回ったのは経済産業省(3.52)、財務省(3.17)、環境省(3.16)、防衛省(3.11)の4省だけとなっています。
5大省庁の順に、経済産業省(3.52)、財務省(3.17)、総務省(3.03)、外務省(2.96)となっていて、外務省の順位がかなり低いことが特徴です。
これは、実際に外務省に知合いが多い桐島としては、仕方がないと断言できます(なお、警察庁は含まれていません)
外務省に入ると成長しない人が多いです。
おそらく、日本外交は、(一部大使館を除き、)以前からあまり機能していないでしょう、、、
日本外務省は、中国外務省や韓国外務省と闘わなければいけないのに、霞ヶ関内でも、働きにくい省庁になってしまっていて、もったいないです。
まずは、5大省庁を働きにくい役所から順番(外務省→総務省→財務省→経産省→警察庁)に紹介します。その後、他省庁も紹介します。
今回は、外務省を紹介します。
外務省の組織と機構
外務省は、本省と在外公館から成り立ちます。
外務本省は、大臣官房(1309人)のほか10局3部があって、約2,900人の職員がいます。
総合外交政策局(269人)は、大臣官房及び全省的なとりまとめを行っています。
地域別担当の5つの地域局(北米局:90人、アジア大洋州局:192人、中南米局:41人、欧州局:134人、中東アフリカ局:94人)
機能別担当の4つの機能局(国際法局:116人、国際協力局:242人、経済局:156人、領事局:180人)があり、情報収集分析を行う国際情報統括官もあります。
外務次官の経歴とみると、各局の格付けがわかります。各局の地位は、以下です。
総合外交政策局>北米局>国際法局>それ以外の部局
外務省のHP資料は見にくいため、わかりやすく図解すると、以下です。
大臣官房、総合外交政策局の下に、機能局(横軸)と地域局(縦軸)があります。
機能局と地域局
機能局は、ツール(法律=条約、予算)があります。
※官僚の3大ツールは、法律、予算、税制ですが、外務省は税制がありません!
●国際法局=旧条約局と呼ばれ、財務省の予算編成権と並び、最強の権限である条約の解釈権があります。
●国際協力局=4,400億円のODA予算を要求し、JICAを所管しています。
●経済局=経済連携協定やG8、G20、APEC等のマルチの経済会議を担当しています。
●領事局=パスポート、ビザ、在外選挙を担当しています。
地域局は、ツールは無く、各国の在外公館からの情報の取りまとめをします。
5つの局が在外公館を所掌していて、世界154か国に231の公館(大使館、総領事館、政府代表部)があります。これら在外公館は、全部で約3,600名の職員が働いています。
外務本省の仕事=外交政策の企画・立案
在外公館の仕事=情報収集・分析、外交政策実施
になります。
外務省は、法律は条約局が国際法を所掌していて、予算は主に国際協力局(ODA予算)が所掌しています。
しかし、地域局・在外公館は、外交という抽象的なものを扱っていて、まずは語学力を磨いて、情報収集がなんぼの仕事です。
外務省は、企業と接点がなく、経済音痴になってしまいがちで、具体的なツール(サブ:Substantialの略です)も限られています。国際法局にいかなければ、法律のことを学ぶ機会はありません。
予算要求が一般職の仕事になっているため、多くの総合職、語学専門職は、財務省に対する予算要求も経験したことがありません。
安全保障、核不拡散、日米同盟、国際法など、抽象度が高い事象に関心がある人は向いています。
総合職ですと、米語、英語、中国語、フランス語、スペイン語、ロシア語、アラビア語がありますが、語学閥でわかれていて、組織としての一体感は基本的にありません。
外務省に関心のある方は、総合職向けのパンフレットで雰囲気を掴むことをおすすめします。
在外の大使館は、その名のとおり、「大使のやかた(館)」です。
大使の年次(年齢)が高いため、大使館は海外の各国に権限が分散していて、本省の統治が行きにくいのが特徴です。
採用職種(総合職、語学専門職、一般職)
他省庁で言う、1種、2種、3種は、外務省では総合職、語学専門職、一般職と呼ばれます。
通常は、1種(総合職)をキャリア官僚、2種(語学専門職)をノンキャリア官僚と呼びます。
昇進スピード(キャリア)が異なるので、この呼び名が付いています。
語学専門職というのは、総合職の言語(米語、英語、中国語、フランス語、スペイン語、ロシア語、アラビア語)も採用しますが、それ以外に、マイナー言語(タイ語、インドネシア語、モンゴル語等)を採用しています。
職種の縦割りが凄まじく、一般職は予算要求、庶務(給与、出張決済)、通信、営繕しかできません。海外にいても、語学を使う頻度は低く、多くの人が語学を使えません(英語さえも出来ないケースが大半です)。
一般職は、優秀であっても、その他の職種に抜擢されるケースは、非常に稀です。
そのため、時たま、金銭関連の汚職・不正が発生します。
私(ノンキャリア)とキャリアが外務省を腐らせました -汚れ仕事ザンゲ録 小林 祐武
という本では、各種事件をコンパクトにまとめています。
佐藤優
外務省と言えば、佐藤優さんが、非常に有名です。
元外務省職員ですが、外務省から身を切られる形で、2002年、東京地検特捜部に逮捕、起訴され、その後、東京拘置所に512日間勾留されました。2009年、背任と偽計業務妨害の罪で懲役2年6か月、執行猶予4年の有罪判決が確定し、失職しました。
「違法行為は一切行っていない」「国策捜査だ」などとして、一貫して無罪を主張していました。
その際の話は、
国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて
にまとめられています。
本書はまんがにもなっています。
最近(23年1月23日)、NHKのロングインタビューが過去の経緯をわかりやすくまとめています。
外務省の問題点
外務省の問題点は、以下です。
●組織としての一体感が一切ない。
●サブ(Substantialの略で、具体的な政策ツール)は、JICAが担っているため、語学を操って、表面的な情報収集をするのが主な仕事。
●組織として、若手の育成というマインドが一切ない。更に、人事に人を見る目がないため、総合職でも、能力なき人材が誤採用されている。
●こういった問題点があるにも関わらず、「外交官」という肩書きに憧れる学生が多いため、組織の改革マインドがない。
●結果として、5大省庁のなかで、1番満足度が低くなっている。
また、佐藤優は、「日本の外交官は、語学力が劣っている人が非常に多く、肝心の情報収集能力に難がある」と指摘しています。
最近では、結婚して出産を機に退職する女性も多くなっています。
特に、語学専門職の退職が増えています。
そのため、大量退職を前提に、語学専門職の新卒と中途採用を増やす予定のようです。
以下、2023年6月28日の日経新聞の抜粋です。
人材育成や働き方改革に注力せずに、採用増に注力する方針のように見えるのが不安です。
外務省の良い点
良い点は、外務省員は、語学研修の機会に恵まれていることです。
新卒採用の総合職は非常に恵まれていて、入省1年目の4月から実務研修・語学研修が受けられます。また、入省3年目4月から3ヶ月の集中研修を受けた後、3年目の夏に、海外の大学院の修士課程のコースに留学できます。
外務省出身者では、岡本行夫さん、兼原信克さんのような魅力的な出身者がいます。
他方、霞ヶ関のどの省庁よりも、最短で海外の大学院に行けるため、この特典を享受した後、転職する人も増えています。
年功序列で組織内に改革マインドがないため、柔軟な働き方、効率的な働き方をしたい方は、中途で入るのは不向きです。
外交官に憧れを持ち、多少の困難や、組織の硬直性は我慢できる方が向いています。
次回は、総務省の解説をします。
以下をご覧ください!
外務省の続きは、以下をご覧ください!