どん底でも詩集は読めた
この夏は様々なよろしくはない出来事が起こり、人生のどん底と言ってもいいような苦難に直面しています。なかなかそういう中では、本を読むことは難しい。だけれど、一部の本は読むことが出来ました。そのうちの一冊は詩集でした。
開いたページに記された文字の連なりを読めば良い。そこから情景や、不思議な感覚が一瞬、きらめく。物語ではない。集中力はいらない。不安に心が絡め取られる時は、もう読むことはやめて、はるか先の空を見上げればいい。散歩をしたらいい。
今回読んだのは『自選 谷川俊太郎詩集』(岩波文庫)でした。
谷川さんの詩は、生も、死も、軽やかに超えていく。たとえば「がいこつ」という詩。
死んだならがいこつになって、友達と遊びたい。がいこつになって乗ったブランコは、風が清々しくだろう。死んだ後も当たり前に存在する自己。
怖がられるかもしれないけれど、手を繋ぎたい。「私が亡くなった後も、あなたのそばにいたい」を、ここまで軽やかに、伸びやかに言い換えた言葉を、私は知らない。
詩にはリズムがある。その言葉を口ずさむことで、自然と勇気が湧くこともある。
わかんないが、「わかん」「ない」に奪胎されて、「みかん」「ある」に置き換えられる。
人生の苦しみはどうしようもないし、逃れられない。でもユーモアやナンセンスが、それを束の間、忘れさせてくれるかもしれない。
詩を読んでいる間、私の心は少し、知らぬ間に、癒されていたような気がします。
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