【書評】ヴィヨンの妻 太宰治
かえちゃんワールド全開な“人間失格”の書評を見たら、私も急に太宰が読みたくなり“ヴィヨンの妻”を再読。
私が初めてこの本を読んだのは、確か次男を産んだあとくらいだから7年前頃かな?
大谷家と比べてしまうと生活は安定していたが、それでも決して“足りている”というような生活ではなく。
“べき” “べき” “べき”という思考で凝り固まっていた頃。
大谷はとんでもない人間だが、しかし私はこの妻が羨ましかった。
ストーリーは、主人公の夫“大谷”が、血相を変えて家に帰ってくるところから始まる。
それは彼がお店のお金を盗んだからなのだが、その後夫は姿を消してしまう。
残された妻は、夫が迷惑をかけた相手の小料理屋、椿屋で働き始める。
(この覚悟を決めるシーンもまた素晴らしい)
そもそもの暮らしはとても貧しく、そして家には全く帰ってこなかった夫が、妻へ会うために足繁く椿屋へ通うようになり、妻も“椿屋のさっちゃん”としてみなにかわいがられる。
最後にはなんだか虚しさを感じるシーンがあるのだけど、私はこの妻がとても羨ましかった。
人非人でもいいじゃないの。私たちは、生きていさえすればいいのよ。
こんな一言で終わるように、登場人物はみな、どこか不完全で不安定だ。
戦中戦後という時代背景もあるだろうが、なかでも大谷は群を抜いてどうしようもない人間で、だがしかし、何故かたくさんの人から愛されていた。
本人は苦悩の中を生きるのだが、借金を踏み倒したり、いつまでもツケで飲み続けたり、浮気をしたり、やりたい放題。
無茶苦茶な彼を、みんな何故か“仕方がないなぁ”と思ってしまう。
魅力タイプでいうところの典型的な王様タイプだ。
そんな夫をもつ妻は、夫の借金の肩代わりに椿屋で働き始めるのだが、
その翌る日からの私の生活は、今までとはまるで違って、浮々した楽しいものになりました。さっそく電髪屋に行って、髪の手入れも致しましたし、お化粧品も取りそろえまして、着物を縫い直したり、また、おかみさんから新しい白足袋を二足もいただき、これまでの胸の中の重苦しい思いが、きれいに拭ぬぐい去られた感じでした。
こう記されているように、なんだかとても楽しそうだ。
それもそのはず。
彼女はそもそも長く接客業をしていた人間で、器量もよく、愛想もよく、頭の回転がいい。
そんな人間が、廃れた家の中で、ろくに帰っても来ない夫の帰りを、幼い息子とふたりで待つ生活。
そもそも、元の生活の方に違和感があったのだ。
そう、彼女は嫌すごをしたのだ!!!
この本を初めて読んだ7年前、私こそ我慢我慢の毎日で、だから本当に彼女が眩しかったし、小説の中の人物なのに激しい嫉妬を覚えた。
“私の夫が大谷みたいにどうしようもない人だったら、私だって夜の街に働きに出れたのに!!!”
というなんとも見当違いな感情を抱いていた事を、今ここで白状します。
夫よ、堅実にコツコツ頑張っていてくれていたのにすまん。
でもね、我慢は人を狂わせる。
自分が勝手にしている事だというのをすっかり忘れ、相手や、環境や、過去のせいにしてしまう。
とんでもない。
自分だ。結局。
なにもかも自分だ。
7年経った今、あの頃の自分よりは、自分自身に責任が持てる人間になれた。
それは確実に、我慢をする事を少しづつ辞めていった成果だ。
それでもまだ、つい人のせいや環境のせいにしてしまいたくなる時もある。
そんな時はまたこの小説を読もう。
この妻は自分の在り方を決めたのだ。
軸のある人間は、他者に委ねないし、求めない。
という気付きを、私は“ヴィヨンの妻”から得たのだが、太宰の伝えたかった事とは違う読み取り方をしていそうな気もする。笑
あ、でも話の中で
傑作も駄作もありやしません。人がいいと言えば、よくなるし、悪いと言えば、悪くなるんです。ちょうど吐くいきと、引くいきみたいなものなんです。
小説家である大谷にこう言わせているし、この世間や読み手に委ねている感!
恐らく彼も理解してくれるだろう。うん。
執筆:かすみん
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