「SARIEL」(サリエル)
こんにちは。どくろくらげです。
~美彩~でvocalとして歌っています。
このシリーズ(シリーズ化決定したようです)は、~美彩~が5部作・5か月連続5曲をリリースしてゆく流れに沿って、いや、少しのディレイをとりながら、各楽曲について少しだけ綴ってゆく、少しだけ野暮かもしれない試みの文章です、なるべく野暮にならないようにします、よろしくね。楽曲を聴いて頂いたあとの気持ちが壊れないようなもの、なるべく読んでみたらまあまあ面白かったかなというようなもの、書けていたら幸いです、よろしくね。
今回はその5部作の2作目、2021年4月に配信「SARIEL(サリエル)」の回です。
~美彩~の「SARIEL」はコチラでお聴き頂けます、どうぞ。
この曲を書いていたのは冬のさなかでした。折しも日本は永らくぶりの大雪に見舞われていて、わたしの窓からも真っ白な雪が見えていて・・・真っ白な雪しか見えなくて、そういう中で書いていた曲でした。毎日毎日雪で、ただ白い雪が積み重なってゆくし、降っても降ってもまだまだ天は雪を持っているんだとわかる空。だから出来上がったこの曲を聴いているとその時に見た雪の日々のかんじがしてきます。思い出すのは雪の白ばかり。
「SARIEL」の歌詞
何処もかしこも真白すぎるから、降り立つ場所がない。そんなふうに、宮沢賢治の『永訣の朝』の一節を諳んじて歌っていたのは曲の中で「僕」を置いて飛び立ってしまう天使ですが「僕」はいつもわたしであり、わたしはいつも、今も、少女の頃も、有翼の何かを見上げながら地上を重く歩く人である自分を感じて地を歩いていました。それはわたしにとって絶望ではありませんでした。地に生きるのは人なる者の歓喜だといつの頃からかわかっていました。
ある朝、君は目が覚めて、もう翼が抜け落ちてしまったのに気が付くよ、でも君はまた新しい翼を手にもしている事だろう、ただ「人間の腕」とのみ名付けられたその羽は、人間の飛び方を、知っている。
かつて少女のわたしが書きつけていた拙く熱く忘れられない詞です。雪の話をしていたのに熱い話になってしまった。どうもわたしは暑苦しくていけません。
そして飛び去る、「サリエル」という天使について
置いてゆかれる飛べない「僕」と、「僕」を置いて世界から飛び去る「天使」、その天使の名前は偶然で選びました。
この曲は初めは「サリエリ」というタイトルにしようと思っていました。あの有名なアントニオ・サリエリの事です。映画『アマデウス』をはじめとするサリエリ伝説のイメージに大きく依るものでした。モーツァルトに届かないで苦しむサリエリ。でも史実を読んだだけでもあのサリエリ像は大きく違っているようだし、よく考えてみたらあの映画を観た時、わたし自身も「サリエリは幸せだったんじゃないかなあ。だってモーツァルトの凄さを理解できるという事はサリエリの才能の深さあっての事なんだから」と思ったし、最後にモーツァルトの絶筆となる曲を「ああやって」代筆(詳しくは映画を。わたしは素敵なシーンだと思ったのですが)できたサリエリはこの上ない才能が呼んだ交歓の中でこの上ない甘美さを味わったんじゃないかと思ったし、あれはサリエリにしかできない、サリエリとモーツァルトの間にしか起こりえなかった出来事だったんじゃないかと思ってしまい、あの場面だけですっかりハッピーエンドのような印象を持ってしまったからです。嫉妬、などという解釈や感情がもしあったとしてもあの甘美さの前にはあっさりと吹き飛ぶ。ある才能の前に自分に絶望できるという事はその才能を感じる事が出来る才能、器量があるという、既に大きな希望なのだと思います。もし何かの前に絶望できるのならばそれは才能です、希望です。
話が脱線しっ放しです。
そういうわけで、タイトル「サリエリ」は、天使と非天使を例えるには、違うよなあと思い至ったのでしたが、その時に「サリエリ」と似た名前の天使の存在に知ります。それが「サリエル」でした。
神の使いにして、裁きをおこなう者にして、月に傾倒する者として、またある説には堕した者として、そして最後に「癒やす者」としてある天使「サリエル」。
こ、れ、だ、と思いました(単純)。
前作「一行詩」でも、歌詞とタイトルは別々に生まれていましたが、今回はそういう感じで「サリエル」と後に決まりました。そしてサリエルについて何も説明していないのに、サリエルについて全てを語り尽くしているようなイラストレーターBeBeさんによるジャケットの、厳しいお顔の天使よ!
配信においては曲が流れている間、ずっとこのジャケットが表示されます。細密な点描で描かれるBeBeさんの絵もぜひご堪能下さい。そしてこのジャケットは、今回の5部作全てを通して作品の顔となります。楽曲と一緒にお楽しみ頂けたらうれしいです。
なんだか書き忘れた事が沢山と、書き過ぎた事が沢山ある気がしていますが、今回はこの辺で。意余って力足らず。お読みくださってありがとうございました。あいかわらずほとんどの楽器をこなすコンポーザーの美彩くん、今回も泣けるベースを弾いているDaisukeくんもそう言っていますが(たぶん)詳しくは曲を聴いて下さい!曲が全てを語っている(たぶん)と思います、願います、祈ります、あなたの元へと、空へ手放します。
有翼の君よ
無翼の僕は未だ地をゆく。
ただこの世界を
愛す。
~美彩~の全ての楽曲はコチラでお聴きになれます。またね。
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