新曲『アルゴの夢』のこと
わたの原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと
人には告げよ 海人の釣り舟 ―参議篁
こんにちは。どくろくらげです。
こちらへのご訪問、どうもありがとうございます。
いきなり和歌をひいてくる。
これは、舟(船)の歌です。
さて、
~美彩~feat.髑髏海月&Daisukeの新曲が配信となりました。
『アルゴの夢』という曲です。
相変わらず3人全員がそれぞれの場所で画面に向かい、
リモートで持ち寄って
・・・持ち寄る、と表現すると一気にアナログ感が出るな~・・・
制作しています。
今だとトラックメイカーというのかしら、
ギターとキーボードの美彩くんが曲の骨子を作り、
どくろくらげ(わたし)が歌を乗せ、
Daisukeくんがベースを弾いて、作っています。
新曲『アルゴの夢』はコチラでお聴き頂けます、まず、どうぞ。
曲についての背景や解説を書くのは、
聴き手の領分が減ってしまうのであまりしないんですが、
久しぶりのリリースになったのでちょっと思い立って書いてみています。
読んでみたら、まあまあ、面白いところもあったかな、
と思って頂ける様な事が書けていたらうれしいです、と思う、
画像はこれを書いている今の季節が秋なので
何かの実りっぽく紫っぽくしてみた、
どくろくらげ(歌の人)↓
さて、
美彩くんから最初にこの曲のデータが届いた時、いつものようにどんなイメージの曲にしたいのか?を聴いたら、
「こんなクソみてぇな世界にはサヨナラ~」
と、だけ返信がきて、
いやあ、何もかもが苦手な感じだなあ、と思いながら歌を書き始めました。
物語を書く事はできても、それがただの嘘だと歌えない。
または、歌っても「おまえ、嘘を歌うなよ」という歌になってしまう。
以前、人の書いた
「這いつくばって引き止めた」
という歌詞を歌う機会がありました。
「這いつくばって引き止め」ない自分にはどうしてもその部分がきまり悪く、
それを誤魔化して流して歌ったつもりだったんですが、
そのたった一行の嘘つきフレーズを聞いてイラッとした作詞者から
すぐさまダメ出しをもらいました。
「そこだけ急に歌い方がポップで軽いんだけど?」
音程もリズムも正しい筈の、でも
「はいつくばってひきとめた~♬」
というわたしの、逃げていて・嘘つきで・舐めたワンフレーズが
大切に詞を書いた芸術家の感性にひじょうにさわったみたいで
一発で歌い直しになったし、
恥ずかしがらずに歌えるようになるまで何年も時間がかかりました。
わたしはけっこうな石頭の愚か者で、
歌うたいとして今よりもっと未熟でもあり、そういう事がありました。
今は
「ああ、これは物語なのでそれを語らなければいけないんだな」
と思うのできっと、
「這いつくばって引き止めた」という歌詞なら
「這いつくばって引き止めた」んだね、
と思いながら歌えるようになったと思います(たぶん)。
なので、美彩くんの言う
「こんなクソみてぇな世界にはサヨナラ~」
も、全然わからなかったんだけど、
「こんなクソみてぇな世界にはサヨナラ~」
を、現在自分の持つ力技で物語にしてみよう、と思いました。
「その時期の自分がとらわれる事象」
というものがわたしには度々あります。
テーマ、とかブーム、とかキーワードと呼んでもいいと思います。
たとえばそれが「蝶」だとしたら、
蝶に関するあらゆる事象に引っ張られるし、自分でも曳いてくるんですね。
今回の曲を書きはじめた時にひっかかっていたのは
「船」
でした。
帆、星頼り、風頼み。マスト、錨、羅針盤。
船に関係する文章を探して読みました。
そこから、真白の紙にそれらを星空の星の様に拡げて散りばめて
物語を書いてゆきました。
船、船、闇夜をゆく船。
どんな船。
乗り手は誰、どんな人。
海はどう。荒れている。凪いでいる。
一番に見えている星は今、なあに。
最後に、
窓を目張りした船室に籠って、光に憧れる子
が一人、出て来てしまいました。
ああやっぱり光が入ってきてしまった。
この子に生きてもらいたいなあ、どんなクソみたいな世界だとしても。
と、思いました。
そういう子の頭の中の物語を、書き、そして歌った、つもり。
最後の歌詞で「便宜上」、「バイバイ」と告げ結ぶ歌を聴き終わった時
美彩くんが
「・・・なんか・・・ぜつぼうじゃなくて希望の匂いがするんだけど」
と言った。
うーん、芸術家の感性ですね。
ちゃんとバレる。
「サヨナラ~」と「物語」を歌いながらわたしが願った事は
「クソみてぇな世界だが何としても生き延びて」だった。
そして、Daisukeくんから
「ベースのデータを送りました」
とメッセージが届き、そこには
「こんなに脈々と拍打ち蠢き進むものは
そこに死ぬ気の一片もないだろう、万難かいくぐって生き抜くだろう」
と思う様な、力の強い、意志のあるベースが入っていました。
最初にも書きましたが、
Daisukeくんはいつもわたしの歌を聴いてベースを入れてくれるスタイルなので、
何らかの歌詞が聴こえて、
世界を聴き取って弾いてくれているのかな(希望)。
ベースだけにしっかりした船の船底みたい。
この曲を聴いてくれる方々にも
聴こえてくるもの、が少しでもあったらうれしいな。
そう思いながら書いています。
「船」の話に戻ります。
歌うたいは、
進む船に舳先に危なげにもそこを選んで立ち、
歌っているようだとわたしは感じます。
それは人々から目立って見える。
でもそこにしか吹き付けない最初の嵐、
叩きつけるしぶきの第一波の影響をも最も受ける。
闇夜現在の進行方向が一体正しいものであるか
その不安と闘わねばならない。
目印の星は自分で探さねばならない。
見つけねばならない。
信じて進まねばならない。
それは孤独の一つです。
いつも一人ぽっちな気がする。
「アルゴ座」という星座を知ったのは偶然でした。
巨大すぎる為3つ(もしくは4つ)の星座に分割され、
現在はその名で呼ばれる事はなく
それでも大空に今でもひっそりと浮かんでいるという星座。
「アルゴ座」という星座のなりたちです。
更にこの星座をとりまく神話や歴史を紐解くと
それこそ真白な紙に無限に世界が拡がりゆく様な
広大無辺な物語になりそうだったですが、
「巨大すぎる為、今では無い事にされてしまった船の星座」
という肩書きをわたしはすっかり気に入ってしまった。
正体のわからない不安の定義みたいで。
本当はおそれられた故の処遇みたいで。
「・・・っていう船の星座があるんだけど」
と話したら、
未定だったタイトルはではアルゴで!、とすぐ決まった。
そしてその、アルゴには夢をみてもらいたかった。
英語にすると
Argo dreaming(夢見るアルゴ)
になるタイトル
『アルゴの夢』
はこうしてつけました。
歌詞はコチラ
そして今回ジャケットのイラストもわたしが描きました。
自分の描く絵には必ず何処かに自分の姿が入ってくる、と聞くので
もしかしたらわたしにちょっとだけ似ているところもあるかもしれません。
あの子はいつだって勇敢だ!世界は君に味方する。
散文というにしてもあまりにも長い文になってしまった。
散文というより散漫だねこれは。
ということで、ここで漸く歌うたいはペンをおきます。
では皆さま、よい船に乗りよい季節を。よい日々を。
わたしもそうしますとも。
感謝です
くらげ
~美彩~feat.髑髏海月&Daisukeの全曲はコチラからお聴きになれます
追記
ここまで書いてきれいに3000字、気持ちよい区切りだったのに、歌を録り直す事に!もう一度身体も気持ちも準備し直し歌ってきました。ただ一曲、たった数時間歌っただけでくたくた。歌う前はまだ上のいい歌を歌えるか不安でしたが歌っている途中「この歌がまたわたしを未来何処かへ運んでくれる」と何度も思い何度も歌い直しました。美彩くんはここからミックスが大変!皆さんにいい音でいい歌をお届けできている未来に今運ばれているならいいなと思いながらこの追記を書いています。秋がもうすぐゆきます。空気澄んで冷たい風に顕れる、もっと星の綺麗な季節にこのアルゴ船座の曲を聴いて頂けていれば、とゆめをみています。11月19日
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?