「一行詩」(いちぎょうし)
vocalをやっている~美彩~で、3月から「5か月連続、5曲配信」を始めました。1か月に1曲ずつ新しい歌を配信してゆきます。おそらくこの5曲はどこから聴き始めても繋がり合い響き合ってゆくペンタロジー(5部作)になってゆくと思います。制作と発表はほぼ同時進行なのですが3月に1曲目『一行詩』をリリースしたところでそういう予感と気配を感じています。
いつもだったら「この曲はこういう曲なんですよ」の様な、説明や注釈、それから背景などを書くのは野暮だし、曲の本分でもないと思うのでほぼ書かないのですが、今回はこういう時間の流れの中でたまたま5か月連続で5曲配信するので、わたしは新しい音楽をひとまず今やらせてもらえる5か月をもらえたようにも感じているし、5か月という時間は案外長いので、こういうのは今しかできない事でもあるのかなあ、と思ったので書き始めてみたもの。5曲の歌達についての少しのお話。今はそういう気持ちなのですがやっぱり野暮だなあとか曲を殺してしまうなあと思ったらやめてしまうかもしれません。その位自由でいたいし、身軽でありたいと思うし、反対に聞こえるかもしれないですが曲に対しての愛と責任をもっていたいと思っています。そしていつも通りなのですが一番には配信、リリース(英語では「手放す」という意味にもなります)した曲はもう全て聴き手の方のものになるという事、アンドレ・ジッドの書いたところの「(受け手がいるから生まれうる作品の)神の領分・取り分とも呼べるもの」を損ないたくないという事、そういう思いに尽きます。曲を聴いて頂いてその方が抱かれたもの、いつもそれが全てだと考えていますが、あとでこれを読んだらわりと面白かったなあ、みたいになればいいなあと思っています。なにしろわたしの文は冗長で、わたしは喋らせておくと饒舌にすぎるので気を付けているのです。歌を歌う時には特に。
では3月に配信したペンタロジーの第一部、一曲目の『一行詩』についてのお話です。
『一行詩』(文中、下線のある部分をクリックするとリンク先に飛べます。)
4回、転調して進んでゆく曲です。一度も同じメロディーに戻る事なく、サビもなく、ただ進んで終わってゆく曲です。曲をもらった時、「一行だな」と思いました。なのでタイトルは『一行詩』。歌詞も読点(テン)だけがついた一文でずっと続き、最後に句点(マル)で終わる形です。
大好きな童謡『金糸雀(カナリヤ)』の、歌を忘れた、そして歌を思い出すカナリヤが、わたしの歌のモチーフにはほんとうによく出てきます。ここでも幕開けを飾って、引っ張ってもらいました。
コンポーザー(ほぼ全ての楽器をこなし作曲している人)である美彩くんからは「しにたくなる曲にして」みたいな事を確か言われたように記憶しています。わたしはわりとすぐ物事を忘れてしまうので記憶違いだったらごめんなさい美彩くん。そして彼の言うところの「しにたくなる曲」というのは「いい曲」を意味します。よくいい曲を繰り返し聴きながら「しにてぇ~」と感動している彼を見た気がします(忘れてしまいましたが)。
そんなところからわりとわたしの大好きな「希望」の裏っ側の「ぜつぼう」を書いた歌詞になりました。でも「ぜつぼう」だけになるのはやっぱりわたしはいやなので「ああいうぜつぼうがあったからこういう希望ある自分を知った事があったよ」という歌詞にしました。「かえれない、もどれない」と思ったから「かえりたい、もどりたい」、もう一生会えないのかな、と思った甘い夜がありましたよ、というような。
「古い歌 悪い趣味!」と君はきっと笑うんだろうね、あの声で・・・というところ、自分のふだん歌わないほどの低音と、突然の五度でハモっているのですが、一人称が「僕」なのでここで突然遠いかつての恋人の女性の声が聴こえたようで気に入っています。でもハモっても女性であるわたしの二声なので女性同士もしくは友人同士にも聴こえるかな、と、ここにも希望を感じています。ねらったものではないのですが、ああ、こうなっておもしろかったな、と思っています。曖昧な、あわいにあるものは何だか定まらなくてとても美しいですね。
歌をつけてからギターとベースを入れていったのですが、今回も一緒に作ったベースのDaisukeくんの辿る、「一緒に奏でるけど、こんなふうに僕はよりそう人間です、そして突き放しもします、だがその甘い思い、何だか僕にも覚えがあります」と言っているようなラインが最高すぎて、ミックスが上がってきた時聴いてちょっと泣いてしまったかもしれません、わたしはすぐ忘れてしまうんですが、多分、泣いた気がします。美彩くんのギターも「狂って」いて、何より最後まで一つにつながった『一行詩』を奏でていて最高でした(舞台で再現難しいそうです、やはりこの音源に限っては今だけの、ここだけのものかもしれない)
今回は~美彩~を代表してDaisukeくん。どんな人かは音からしかまだよく知らないです。だからわたしも皆さんとおそらく同じ。
衣装の打ち合わせのない自由な撮影の時、Daisukeくんのコートとわたしの帽子が同じベルベット素材でかちあってよかったのでした。
Daisukeくんと美彩くんが一人称『僕』を奏でてくれていて、幸せだなと思いました(ぜつぼうの曲を)
というわけで最早書きすぎ、語りすぎ。歌係の金糸雀はこの辺で今日はペンを置こうと思います。読んで下さってありがとう。ああ、ここまでほぼ推敲のない一息書きのわたしの文が最早『一行詩』。もう一度、曲のリンクを貼ってひとまず一幕目をおろします。2曲目もどうぞお楽しみに、皆さんと一緒によい5か月をすごせたらとてもうれしいです。どくろくらげ(Vocal)
~美彩~の曲はここから聴けます
美しく彩られたよい時を。
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