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スノードラゴンの花束
老人ホームの洗濯室を、私は競馬の予想室にしている。
テーブルにわざと洗濯物の山を築く。その陰に隠れるようにA4サイズのホワイトボードを持ってきて、スマホでJRAのサイトにアクセスする。ニヤニヤしながら、明後日に迫った、高松宮記念の出馬表を確認する。
介護の現場は残業がつきもので、とにかく拘束時間が長い。予想するプライベートな時間すら削がれてしまう。これは苦肉の策なのだ。全職員よ!あぁ許した
5分だけ行方不明になる男
老人ホームの個室の鏡を拭く私の前にいるのは、あきらかに未勝利馬の私。
努力はしているものの、出世も縁遠い介護職員の末端だ。趣味の下手な俳句を詠みながら、気に入った競走馬に少額を投じ、週末のささやかな楽しみとしている。
介護という職業柄、土日祝の休み獲得が万馬券並みに困難な月ばかり。私の施設ではなぜか、共用スペースのテレビで競馬中継を流すことはない。理由はとくに無さそうであるが、勝手にチャンネル