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【ショートショート】インドを編む山荘

 ゆうやけこやけでひがくれて……。
 遠くで六時のチャイムが聞こえる。

 山道で迷った。どこを見ても同じ景色。辺りは既に薄暗い。
『山で迷ったら上に登れ』とよく聞く。俺は上を目指した。
 暫く行くと、茂みの向こうに何かが見える。
 茂みを掻き分けると、そこには古い山荘があった。
 流石に誰もいないだろう。一休みしよう。
 扉を開けると、目の前に階段が。
 階段に足をかけた途端。
「ここは私の家ですよ」
「うわっ!」
「何か用ですか?」
「すみません。道に迷ってしまって」
「そうでしたか。どうぞ」
 二階の部屋に案内された。部屋には大量のミシン。
「これは一体」
「インドを編んでいるんです」
「は?」
「インドも人口が増えたでしょう。あれは私がしたんです」
 こいつ気が狂ってるのか。それとも俺が。
「失礼します!」
 堪らず外に出た。
 その瞬間、眩い光に包まれた。

 ゆうやけこやけでひがくれて……。
 遠くで六時のチャイムが聞こえる。


                (424字)


今週も、たらはかに(田原にか)様の企画【毎週ショートショートnote】に参加させていただきました!

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