dokug(ur)a論的美術論① What museum 「TAKEUCHI COLLECTION 心のレンズ」
芸術のことをよく知らない素人の蝉倦俊歩が直面したアートを感じたままに(適当に)語る、特にためにならないエッセイ。
第一回 What museum 「TAKEUCHI COLLECTION 心のレンズ」
開催期間:2023年9月30日—2024年2月25日
通っている英会話教室の先生からWhat museumの話を聞き、その当日に早速来てみた。
当日に開催されていた「TAKEUCHI COLLECTION 心のレンズ」はそこまで大きな展示ではなかったものの、ピカソのスケッチ、ル・コルビュジエのデザインした椅子から2020年以降の最近のアーティストの作品まで幅広い分野の作品が丁寧に配置されており、面白かった。
ル・コルビュジエの椅子
会場は建物の二階で、入ってすぐピカソのデッサンがお迎えしてくれて、それ自体とても価値深いと思うのだが、個人的にはその背面にあるル・コルビュジエのデザインした椅子の展示方法が大層よかった。
同じデザインの椅子20脚程度を宙づりにして立体的に並べており、さまざまな角度から鑑賞できるようになっていた。また、遠目に見ると、全体が椅子で形作られた立方体のようになっており、それも視覚的に面白い。
椅子単体のシンプルで丈夫そうながらもデザインの力を感じる造形をじっくり鑑賞するもよし、全体としての展示として楽しむもよし、といったところで、二重に楽しめるように思われた。
現代アートについての感想
現代アートの方は、一見乱雑に見える作品に作者の細かなこだわり、思想、意匠が見える作品があって面白かった。気になった作品を三つ上げたいと思う。
許寧(シュ・ニン) 「Starting with a Tear」
白いキャンバスにカラフルな油絵の具が飛び出すように厚く乱雑に叩きつけられているような絵で、遠目に見ると”現代アート”の絵のようだが、近づいて見てみると要所要所に「目」の絵が描かれていることに気付く。ここで絵の全体が涙を表していることが分かる。絵の全体に上下の方向性が生まれて、見方が変わっていくというような体験だった。
写真を見直してみると「木」をイメージさせるようなデザインも盛り込まれており、全体が一本の木でもあるのかもしれない。
2.大山エンリコイサム 「FFIGURATI #133」
大きなキャンバスに描かれているのは黒い線のみが使用されたダイナミックなストリートアートのように見える。近づいてよく見ると、その中に、複雑に分岐するぐにゃぐにゃの刃のようなマークが、等間隔に並べられていることが分かる。驚くことに、それらの全てのマークが背景の黒い線の上に綺麗に浮き上がっているように描かれている。細部へのこだわりを感じた。
3.サイトウマコト「Face Landscape 2021.02」
色とりどりのとても小さなカラフルな丸いチョコをキャンバス全体に隙間なく詰め込んだような絵。近づいてみると絵の具を何度も重ね塗りしたように見えるが、ぽつぽつとしたドットのような黒い点が等間隔に並んでおりどうやって描いたのか気になる。
他の気になったもの
缶ビールや缶ジュースをセラミックで再現した作品「Work18-CS6」(三島喜美代)や、四つの大きな青いタイルのような絵「Untitled(TK3647-1/2-'69)」(桑山忠明)も独特の味があってよかった。
また、オスカー・ニーマイヤーがデザインしたロッキングチェアが展示されていたが、これが天童木工のブラジル工場で製造されたものとあり、私の来歴との不思議なつながりを感じた。天童木工ってブラジルにも工場あったんだ。
日の終わり
その日はついでに「TERRADA ART AWARD 2023 ファイナリスト展」を見たり「Van Gogh Alive」を見たりした。
芸術のことはよく分からないが、何となく自分なりの楽しみ方が分かってきたような一日だったと思う。