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仮想的な自然法則の探究 「ピュシスについて」アーティゾン美術館 dokug(ur)a論的美術論

アーティゾン美術館で開催中の、「ジャム・セッション  石橋財団コレクション×毛利悠子— ピュシスについて」を見てきました

「ジャム・セッション  石橋財団コレクション×毛利悠子— ピュシスについて」
2024年11月2日(土)–  2025年2月9日(日)

各々の作品は一見感性で作り上げられたコンセプチュアルなアートに見えますが、
その裏に潜んだ意図に知的好奇心が刺激されました。

展示会場の作品を観察すると、明らかにいくつか作品は何らかの配線で繋がっており、連動を持っていることが分かります。
しかしながら、その連動の仕方は展示会場では明示されていないので、
鑑賞者は表層に現れる複数の事象を見て、その裏の連動の仕方、アルゴリズムを想像することになります。
それは、まるで謎解きゲームや仮想的な自然法則の探究のようです。


電球の明滅を太陽光発電パネルが電力に変換して蝶が動作する作品。これはかなりはっきりと連結が明示されている例。


この角度でしばらく見ていないと分からない連動があるので展示場では大きな視線で色々見てみましょう。


ブラインドの下にこっそり置かれたプリズムにも、なんか意図があるのかしら。

そして、この展示の最大の見どころは大きく空間を使って展開されたマルセル・デュシャンの<大ガラス>オマージュ作品群でしょう。

それらの作品群も、何らかの連動・アルゴリズムを持っており、デュシャンも試みたという偶然性の美を生み出そうとしていたようでした。

何らかの受信機やセンサーが濾過器に繋がる
この形を見ただけでデュシャンオマージュと分かったのでアート初級者と自称してもいいのでは?
おそらく、一方の電極が、もう一方の電極である金属で描かれた絵の上を回転することで、導通したりしなかったりするという仕組み

鉄琴の音が響くとにかく暗い空間など、表出しているものだけでも非常にアートなので、空間を味わいにいくだけでも面白いと思いますし、
現代アートや科学・工学の知識があれば別の楽しみ方もできるという、一度で二度美味しい展示だったと思います。
お近くの方はぜひご覧になってみてください。

ちなみにブランクーシの「接吻」も展示されていますよ。


ブランクーシの「接吻」
<大ガラス>のテーマとの関連性も意図されてるのかしら

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