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「探墓癖」2025年1月23日の日記
闇バイトに行った。
「150年」に行った。
【展示風景追加】https://t.co/SWvYTW4rJX
— 美術手帖 ウェブ版 (@bijutsutecho_) January 24, 2025
取り壊しが決定している東池袋の一区画の建築群、全6棟の広大な敷地を舞台に展覧会「150年」が開催中。その様子を一部追加掲載しました。 pic.twitter.com/G5r6SvHHLU
注意事項に「会場内の一部の作品を除いた展示物およびすべての物には一切触れないでください。」とある。つまり、以前から建築内にあった家具や雑貨にも、新たにそこにつくった作品にも触れてはいけないということだ。エコテロリストへのアレルギー反応からも見てとれるように、美術品に触れてはいけないという処女崇拝は存在する。「150年」においては、家具・雑貨と美術品はどちらも同一の法で触れることを規制されているため、崇高さは等価に設定されている。ここにおいて、美術品に触れてはいけないという意識は他人の家のものに触れていいのかという意識との境界が曖昧になる。ここにおいて、鑑賞者は美術品の写真を撮るように他人の家を盗撮する快楽を得る。「触れる」とはなんなのか。
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大竹舞人の作品。6棟の建物に残された衣類やカーテンなどの布を材料とするこの作品は床に敷き詰められ、そこから天井まで伸びるゾウのような彫刻だ。もちろん、これにも注意事項に則って手では触れないが、作品の下部は動線上にあるので踏まざるをえない。触れてはいけないが、踏んでもいい。
私は自らの世界観について「パッチワーク」という語などを用いて説明することが多く、それは椹木野衣『シュミレーショニズム』の「カットアップ」などとも感覚を共有しているが、この作品は布を切断や修復することなく使用しているらしい。私が「パッチワーク」という語を平面的なイメージで用いていたが、実際のそれに存在する素材の厚みや膨らみを足の裏から感じることができた。
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池袋暴走事故の慰霊碑に行った。最近読んだ磯部涼『令和元年のテロリズム』に取り上げられていたので行きたくなった。「普遍的な日常」に交通事故による衝撃波が加わることで、はじめて「つぼみ」のかたちが立ち顕れる。
統合失調症の症状の1つに関係妄想というものがある。これは被害妄想とは異なり、全てが自らに関係しているという思いこみで、そこに被害/加害という対立を前提としたジャッジは存在しない。ただ関係していると思いこむ。
私は2年間、アニメ「リコリス・リコイル」についての関係妄想にとらわれている。この作品が優れているかどうかは関係なく、私はあらゆるものをあの鑑賞体験と連関させてしまう。あのテロによって斜塔した東京スカイツリー。「花の塔」と歌われた斜塔は日常とテロの緊張関係の表象だ。舞台である墨田区などで被害を出した関東大震災による地理学的精神的外傷だ。浅草十二階あるいはツインタワー倒壊の再現だ。かつて、日本の詩人は隅田川にパリのセーヌ川を見出してきた。パリと東京には〈凱旋門・セーヌ川・エッフェル塔=雷門・隅田川・東京スカイツリー〉という地理学的暗合が存在する。塔は墓だ。私は永井荷風に倣って墓めぐりをする。「150年」も墓だった。慰霊碑も墓だった。私は〈塔=墓〉を探す。むしろ、全ては私に〈塔=墓〉として発見される。