憲法の勉強の仕方
憲法は悩みどころだと思います。というのも、行政書士試験の択一で5問、多肢選択式が1問で合計28点です。それなりの規模ですが、行政法の112点や、民法の76点に比べると、少ない得点配分です。何より、過去問を見る限り、近年では
年度によって難易度が変わる典型科目
になっているようです。元々、憲法は抽象的で理念先行のところがあり、問題の難易度を上げるのは簡単です。模擬試験などでは、
正直、問題文の文章が何を言っているのかすら、わからない問題がありました。
テキストに載っていない問題も平気で出てきます。憲法が出来てきた歴史って、近代の人権意識との関係が非常に深いので、
それ、憲法というより、ヨーロッパの歴史の問題では?とか、
いや、それ、社会学とかで扱う分野じゃないの?とか、
おかまいなしに、「憲法の問題として」出題されます。はい、それが試験というものなので、文句は言えません。
もちろん、定番の判例が出たり、統治の基礎的な知識問題が出ることもあります。つまり、
憲法は当たりはずれが大きい
んです。まず、択一は見たこともない謎の難問が出る場合があります。多肢選択式問題は、膨大な判例のどれが出るかわかりません。それも、同じ事件なのに、複数の判例に分かれているもの(たとえば公害訴訟とか)は
どの判例の事、言っているのか?この時の結論と理由、なんだっけ?
という、判例問題で覚えにくいところを出してきたり、細かい文言の穴埋めが出たり、
年度によって、難易度がマチマチ
だったりします。行政書士の試験に限りませんが、試験対策として、
①得点配分が多い、出題数が多い科目、分野を優先して勉強する
②勉強した分、得点につながりやすい科目を優先する
が大事です。①は憲法はまぁまぁというところです。捨てる受験生なんかいないでしょう。問題は②の方です。
前述したように、年度によってずいぶん差が開きます。年度を問わず、安定的に得点するには、相当な時間と労力をかける必要があります。そうです、
そんな暇があるなら、行政法と民法の勉強にまわした方が遥かに合格率は上がる
わけですね。でも、無視するわけにはいかない。そこで、絞るわけです。
統治の基礎知識と、定番判例は必ず、おさえる
ことです。判例の多くは人権の分野から出ると思います。統治は絶対とは言いませんが、出れば基礎的な問題が多いと思います。この辺りはテキストの知識、過去問の知識で概ね、カバーできると思います。問題は(主に人権の)判例なんです。判例の量も行政法と一部、重なっているとはいえ、膨大な量があります。それらを丸暗記なんてもちろん、出来ません。
しかし、特徴的な文言は頭の片隅にでも残しておかないと、
穴埋め問題に対応できません。
多肢選択式問題の選択肢を絞っていくと、こんな感じに分類されると思います。
①入りそうな語句
②まず、入ることはないだろう、直ぐに切り捨てられる語句
問題は①には大抵、複数、候補が残ることです。もし、判例を熟読していて、判例中の文言も覚えていたら、
あっという間に正解を出して、さっさと次の問題にいけます。
ところが、そんなに細かいことは覚えていないというケースが多いと思います。世の中、そんなに甘くない。そこで、次点の策として、
文章の前後から、日本語として、意味が通じるものに絞る
という作業をしていきます。特に同じ言葉が入るものが2か所以上、ある場合は出題者も概ね、その意図で出していると思っていいです。この作業は実は憲法問題でもなんでもなくて、
一般知識の文章理解と同じ作業
です。例えば、穴の直前に接続詞の「しかし」があるなら、その前の段落とは反対の意味が入るだろうなと、こんな感じの解き方です。注意が必要なのは
絶対に判例そのものが出ている保証はない
ということです。判例を基にした、誰かの意見を書いている文章だとすれば、
暗記したまま、書いても正解になるとは限らない
ということです。裁判官がした定立の内容を書かないといけないかもしれないし、当てはめた、その事件の固有の結論を聞いているのかもしれません。暗記している場合も意外な落とし穴があったりします。これは憲法に限らず、判例学習のポイントになることですが、
質問内容が
①判例中に裁判官が定立したことに対することなのか?
②その事件、固有の結論を聞いているのか?
この見極めが大事です。判例は、定立(理由と言ってもよいと思います)、結論をしっかり、覚えておかないといけないです。薄いテキストだと、簡素化されすぎていて、あまりちゃんと書いてないので、判例の本は絶対に別に購入した方がいいです。テキストと過去問に出てくる判例だけだと、そもそも、数が不十分ですし、重要なポイントがすっぽり、抜けてしまっている場合が少なくないからです。
憲法は条文が少なく、文言も短いです。条文そのままが出ることは少ないと思います。その分、膨大な判例のポイントを理解、暗記して、できれば、その判例特有の文言も頭の片隅に残すくらいは意識しておく方がいいです。そして何より、論理構成なんです。
こうなって->こうなるから->こういう結論になるんだ
という論理の流れです。判例によって、明言をわざと避けているように感じるものもあります(おそらく三権分立の建前から)から、わかりにくいものもありますが、基本は
裁判官がどういう理由で、そういう判決を出したのか、論理(道筋)を覚えておく
ことなんです。最後に学説です。学説って、学者が
「私はこの件はこう、思う」
と、論文で発表したものです。特に憲法は抽象的ですから、解釈の幅が広いんだと思います。しかし、学説は有名どころを押さえているくらいで良いと思います。超有名なのが、予算の法的性質とかですね。この辺はさすがにテキストに出ていると思います。
もちろん、これらの対策をしても、満点は難易度が低い年度に当たらない限り、解けないと思いますが、概ね、対応可能です。少なくとも、
憲法のせいで、合格できなかったという事はかなり、少なくなる(難問は誰にとっても難問なので)とは思います。
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