真実は、だいたい「思い込みの向こう側」にしかない
私たちは日々、様々な「思い込み」を持って生活しています。
「この方法がきっと上手くいくはず」
「あの人はこう考えているに違いない」
「このアプローチが最適解だろう」
そんな「思い込み」に対して、あなたはどんな態度をとっていますか?
もし「思い込むのはよくないことだ」とバッサリ切り捨ててしまっていたら、ちょっともったいないかもしれません。
思い込みは、可能性への入り口
多くの人は「思い込み」を否定的に捉えがちです。
「思い込みは良くない」
「先入観は排除すべきだ」
「客観的に物事を見なければ」
確かに、思い込みだけで突き進むのは危険です。しかし、思い込みを完全に排除することは、私たちの創造性や直感的な問題解決能力を損なうことにもなりかねません。
なぜなら、仮説とは、根拠のある思い込みのことだからです。
「根拠ある思い込み」が仮説になる
優れた科学者や起業家、クリエイターたちに共通しているのは、彼らが自身の直感や思い込みを大切にしながら、それを丁寧に検証していく姿勢を持っているということです。
これまで、多くの偉人たちが「思い込み」から、画期的な偉業を成し遂げてきました。
アインシュタインの相対性理論も、最初は「光の速さは一定なはずだ」という直感的な思い込みから始まったらしいだすね
Appleのスティーブ・ジョブズは「人々はシンプルで美しいデザインを求めている」という強い思い込み(狂気じみた信念)を持っていました
多くの画期的な発明は、「こうすれば上手くいくはずだ」という発明家の思い込みから生まれています
重要なのは、思い込みを持つことではなく、その思い込みをどう扱うかなのです。
思い込みを活かす3つのステップ
では、どうすれば思い込みを建設的に活用できるのでしょうか?以下の3ステップを意識してみてください。
1. 思い込みを認識する
自分がどんな思い込みを持っているのか、明確に認識する
まずは3日間、「〜に違いない」「きっと〜だ」と考えた場面や重要な判断をした状況をメモに残してみてください。
その後、そのメモ全体に目を通してみて、繰り返し出てくるパターンを探し、「〜の場合は必ず〜」という形で言語化してみましょう。
最後に、それぞれの思い込みがどのくらい正しそうかを、直感で、1-10で評価してみましょう。
このプロセスで、向き合うべき思い込みの概要が見えてきます。
それがどこからきた思い込みなのか、内省する
その思い込みがどこから来たのか、過去の成功体験・失敗体験・学習体験を振り返ってみましょう。もしかしたら、誰かから聞いた言葉や、新聞などの情報源から聞いたことがあるものかもしれません。
そして、なぜその思い込みを強く信じているのか、自分にとってどんな意味があるのかを言葉にしてみましょう。
まだ、妥当性や正確さなどは全く気にする必要ありません。ありのままを記録することが重要です。
2. 仮説として整理する
思い込みの背景にある根拠を整理する
まず、この思い込みを支える具体的な経験や事実を箇条書きで並べてみましょう。「人から聞いた話なのか」「実体験に基づくのか」「どちらともつかない」ぐらいに分類しておくと良いですね。
次に、それぞれの根拠がどの程度信頼できるものなのか(一度きりか、複数回か。あるいは公式な調査か、私的な体験なのか)を評価してみましょう。根拠の強さによって優先順位をつけることで、次のプロセスが楽になります。
検証可能な形に落とし込む
ここから一気に言語化の王道に則って、作業として進めていきます。
まず、今考えている思い込みを「〜であれば、〜になる」という具体的な因果関係の形に書き換えてください。
次に、その結果が数値や具体的な状態として観察できるかを確認してみましょう。
測定が難しそうであれば、なんとか測定する方法を考え出すか… アイデア化をあきらめるか。ここが第一の関門です。
そうでないことが明確に判断できるか?(反証可能な仮説であるか?)
最後の準備は、どういう結果が出れば自分の仮説が間違っていたと判断できるのかを明確にすることです。
つまり「成功条件」と「失敗条件」がそれぞれ区別できるかを確認します。
※反証ができない仮説の例
「努力をすれば必ず結果は出る。結果が出ないのは、努力が足りないからだ」
結果が出なかった場合、すべて「努力不足」で説明できてしまうので、このまま進めるのは難しいですね。
実際に何かで結果を出すには、相手との組み合わせや状況、運なども絡み合ってくるため、すべて「努力不足」としてしまうのは、ちょっと乱暴に見えます。
3. 体系的に検証する
ここからは、見えてきた仮説を確かめていきましょう。
検証とは言いますが、何も大規模な調査や研究をするわけではありません。大事なのは以下の3つ。
小さな実験から始める
データや結果を客観的に観察する
成功/失敗の両方から学びを得る
これを、何回も何回も、短いスパンでどんどん繰り返していくことが望ましいです。失敗は成功の元。
検証で重要なのは試してみた「数」です。打率ではありません。
自分の手の届く範囲から、なんなら普段の自分のルーチンなどを、検証の舞台として選んでいくのは良いですね。
「思い込みの向こう側」に真実がある理由
私たちの思い込みは、時として間違っていることもあります。しかし、その「間違い」を認識し、修正していく過程こそが、真実に近づくための道筋となります。
思い込みを持つことを恐れず、それを出発点として、検証を重ねていく。その先に、私たちの求める答えは待っているのです。
まとめ:思い込みを味方につける
思い込みは、創造性と革新の源泉となりうる
重要なのは、思い込みを持つことではなく、それをどう検証するか
体系的な検証プロセスを通じて、思い込みは有益な仮説となる
この記事を読んだあと、何か「こういうのは、こうあるべきだ。でも、そうじゃないな?」という疑問が浮かんだとき、それを否定するのではなく、「検証すべき仮説」として捉えてみてください。
その姿勢が、イノベーションや問題解決への近道となるはずです。
思い込みを恐れず、でも慎重に。
それが、真実に至る最短のルートなのです。
参考文献
『イシューからはじめよ[改訂版]――知的生産の「シンプルな本質」』安宅和人 (著)
『入門 考える技術・書く技術――日本人のロジカルシンキング実践法』山崎 康司 (著)
『仮説思考 BCG流 問題発見・解決の発想法』内田 和成 (著)
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