とあるチェーンメールの変遷
どこの家でもそうなのかは知りませんが、母は「スマホが欲しい」と言う私に「これで我慢しなさい」と機種変をした際に捨てずに取っていたお古の携帯を渡していました。
今考えてみるとめちゃくちゃな話です。SNSみたいな、外との繋がりを得たいからスマホが欲しいって言ってるのに、今はもうどこにも繋がっていないお古の携帯電話を渡すんですから。
しかもさらにめちゃくちゃなのが、そのお古の携帯電話っていうのがガラケーだってところです。
百歩譲ってこれがスマホだったら、Wi-Fiに繋いだりとかで場所こそ選びますが使うことができたのに。それがガラケーって……。
当たり前ですけど、そんなの貰ったってすることなんか何もないんですよ。もちろんネットになんて繋がらないし、もともとインストールされてたブロック崩しやらのゲームも、現代のゲームに慣れてる私にとっては退屈もいいところだし。
そうしているうちにいよいよのガラケーでやることがなくなって、もう苦肉の策としてデータとして残ってる連絡先とかそういうのを見ていくわけです。これが意外と結構楽しかったんですよ。
例えば母は自分の母、つまり祖母の電話番号を登録資する際、名前を入力するところで読み仮名のところに「おかあさん」って入力してたんですね。きっと自分の母のフルネームをいちいち検索するのが変な感じがして、そうしたんだと思います。なんかそういう小さな工夫みたいなのが見ていてちょっとおかしくて。
それでいろいろと見るていくと、最終的写真ボックスにたどりつきました。最初はそんな所を見て両親の恋人時代の写真なんて生々しいもの見たくなかったから避けていたんですが、あまりにもすることがなくてつい見ちゃったんです。
するとですね、もちろんそこには普通の人がとるような風景の写真とか、どこかの飲み会で撮ったであろう写真、まああとは両親がちょっと見てて気まずい感じで仲がいい写真とかがあったんですけど、一番下までスクロールしたところに何枚かの変な画像が目に入ったんです。
なんて言えばいいんでしょう。注視して辛うじて読めるような、そんな文章が書いてある画像でした。
最初は何か書類をメモ代わりに撮ろうとして何か失敗したのかなと思ったんですけど、よく見るとガラケー特有のあのドットの荒い文字列をさらにガビガビにしたような感じで、その上なんか文字の配置が独特だし、と深く考えたあたりで、どうやらそれは他人の携帯のメール受信画面を撮影したものだと気づきました。
そこまで把握して改めてしっかりと中身を読むと、それは所謂「呪いのメール」のようでした。
……ちょっとドキドキしたんですけどね。ほら、なんか浮気している彼氏の証拠メールとか、そういうのだと思ってたから。
だから少しがっかりしながらも、まあ当時のそういう流行りみたいなものも聞きかじってはいたので、異文化交流くらいのつもりで内容を読み進めていったんですけど、だんだんと様子がおかしくなって。
ちょっとこれ見てもらえますか。
当時すごくその内容に引っかかってメモを取ったんです。それを使って簡易的にレイアウトとか再現してみたんですけど。
これ、何なんでしょう。
いや、もちろん「呪いのメール」なんていう半ば悪戯心で行われるものなので、いろいろと途中で変わっちゃうのは分かるんです。
なんというかそれだけでは納得いかないことがたくさんあって……。
付け足すにしても、こんな誰もふざけずに「経緯を具体的にする」方向に行くものなんですかね。
当時って、そんなに色んな人が呪いのメールを回してたんですかね。
最後に、これ、写真ボックスじゃなくてメールの下書きのところにあったんですけど。
聞けませんよ。
だって、これがウソでもホントでも、どうもしようがないでしょ。