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dok-s の映画日記その38「帰ってきたヨッパライ」(1968)

「日本初のリミックス映画」
評価:★★★★

帰って来たヨッパライ

題名こそフォークルのヒット曲「帰って来たヨッパライ」だが、中身はヨッパライとは関係なさそうな、大資本の綺麗なフィルムで撮影した反戦テイストな実験映画。
当時は難解で相当不評だったとか。意味不明すぎて、見ていた子供が泣き出したとか。

しかし、このフィルムは、それまでの芸能人とは違う、突然変異で現れた、アマチュア学生フォークバンドの衝撃を見事に表している。
ベテラン脇役俳優、殿山泰司扮するおばあちゃんの「しんせいは40円ですかねぇ」のセリフの見事な間に、間抜けに棒読みで答えるアマチュア3人。
これだけでも充分シュールなのに、カットアップや、最初からやり直しの後半のリミックスまで、ミューテーションな彼らに対して大島監督の精一杯のアバンギャルドで応えているのが絵的におかしいじゃありませんか。

緑魔子扮するネーチャンの、これまた、アマチュアの彼らと絡めるとより美しさが際立つおヌード、早すぎたエディ・アダムスの有名な反戦写真のパロディ、極め付けは映画が途中後半からヨッパライが天国から追い出されたかのように、振り出しに戻る、映画そのものを使った実験まで。

1968年日本の精一杯のアバンギャルド、綺麗なフィルムで納めたそのインパクトはその後の亜流アバンギャルド8mm映画のどれも叶わないだろう。

本当に痛快なのは、大資本で遊んでやることだと、軍服を着るのを否定したとぼけた顔の大ノッポが言っているようで。
この1968年昭和元禄唯一無二のビッグバンギャルドな映画に乾杯。(2020.6.3)

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