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トラバーチン模様の天井が。

大っ嫌いだった病院の白黒の天井。

子どもの頃、身体が弱く入退院を繰り返していた自分は目が腐るほどこの天井を見てきた。

学校に行けない平日の昼間も。全然寝付けない消灯後の真っ暗な夜も。不安で心が押しつぶされそうだった手術の前日も。いつもこのうじ虫のような模様の天井が目の先にはあって、そんな変化のない毎日が嫌だった。

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病院の天井でよく使われているこの模様。トラバーチン模様って言うみたいですよ。10分前に知りました。この模様が好きな人っているのかな。

なんでこの模様が多くの病院で使われているのか少し調べて見たら、①安価で手に入りやすく、②表面の小さな凹凸による吸音効果がある、みたいです。まあそこはどうでもいいんですけどね。

入院生活の苦痛って経験しないとほんとに分からないですよね。味のしない食事、痛みを伴う処置、隣の人のいびき、今日の天気もわからないカーテンで仕切られた多床室。

僕はよく暇すぎて、点滴って1分間で何滴落ちてるんだろう?って測ってみたり、体を動かしたくて尿意もないのにトイレに行ってみたり、そんなバカみたいなことをよくやっていました。

みんな今なんの授業受けてるのかな、今日野球の大会だったのにな。みんな今頃ボールを追っかけてるのに、自分は今、うじ虫と見つめ合っている。変な話だ。

入院生活にいいことなんて何も無い。そう思っていたけれど、いま僕は看護学校に通っている。天井にうじ虫がいる病院で看護師として働こうとしているのだ。これまた変な話だ。なんちゅう風の吹き回しだ?

入院生活にいいことなんて何も無いわけではなかったのかもしれない。あの時、入院したおかげで患者さんの感じる様々な苦痛を身をもって体感し、次は自分が誰かを支えたいと。看護師になりたいと思えたのだから。

前回の実習で患者さんのMRI検査を待っている間少しだけ看護師と話をする時間があった。その時に自分が入退院を繰り返していて、将来は小児科で働きたいと思っていることを話した。すると看護師は、「その時は辛かったと思うけど、今となっては強みだね!絶対そういう経験している人の方が患者さんの苦痛に気づけるもんね!」って言ってくれた。

この言葉が適切かはわからないけど、その時「入院して良かった。」と思えた。今この瞬間を病院で過ごしている人はそんなことを思えるはずもないし、看護師を目指していない人からしたら入院して良かったとこの先思える日が来ることはないと思う。

でもあと数年したら、「入院が嫌いな、うじ虫が嫌いな誰かを、うじ虫が嫌いだった自分が少しだけ支えられる日が来るのかもしれない。」

トラバーチン模様の天井に、あの時大っ嫌いだったうじ虫に、出会っていなかったら、今の自分はいなかったかもしれない。


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