vol.22|誰もやったことがないことをやろう
学校でのICT活用に訪れたさまざまな変化を、Google との出会いを切り口に語る本シリーズ。今回は洗足学園小学校の 宮田 好展 先生にインタビューしました。
洗足学園小学校で社会科教師として22年目を迎える宮田好展先生。
現在はICTチーム統括をされています。大学卒業後に予備校で講師をしながら通信で小学校免許を取得されたそうです。
Google 認定教育者については2020年に教員研修として皆で取り組み、レベル1・2を取得されています。また小学校の Google アカウントを管理されていることもあり Google Certified Professional ChromeOS Administrator も取得されました。その他 DaVinci Resolve 18 Certified Trainer にも認定されています。
誰もやったことがないことをやろう
教育ICTに取り組むキッカケは何ですか?
学中堅からベテランに差し掛かると、学校業務で責任ある立場を任される機会が増えてきます。
学校広報や入試など、今まで積み上げてきているものを引き継ぎながらの仕事も良いのですが、私は「誰もやったことのない仕事」が面白いのではないかと感じICTを選択しました。
大変なことも多いのですが、やはり新しいことを学び続けられるのは非常に楽しいです。
また、いろいろな学校や先生と繋がることができるので、その交流からこの歳になっても学びづづける姿勢が必要なんだと感じています。その姿勢を子どもたちに見せることができたらと思っています。
転機となった機会はありますか?
Google の利活用で衝撃を受けたのは2018年に参加させていただいたGEG LANDです。どのワークショップも非常に印象的であり、出会った人たちも非常に魅力的でした。
当時から Google は利活用していたのですが、Gmail 以外に目立った利用はしておらず、各種アプリの教育利活用の可能性を感じたのはこの時が最初です。
特に先生方の校務で非常に使えるのではないかと感じ、本校でも教員研修を実施するところからはじめました。
当時は「子どもの荷物を軽くするミッション」の一部として端末導入・テクノロジー利活用が検討されており、そこに合わせて教員の校務に Google をどのように落とし込むかの検討を同時進行で進めました。
現在では職員会議や各種ミーティングは共同編集の上手に利活用して実施しています。以前は会議前は資料の山だったのですがペーパーレスにもなり、格段に作業効率も上がっていることを実感しています。
学び方の変化に手応えを感じています
ICT利活用から10年ほど経過しましたが変化はありますか?
全てが変わったと感じています。
特に子どもたちの学び方が変わりました。
一斉授業では求められている力を養うことはできないと考え、子どもたちが協力して学ぶ学習が非常に増えました。今では先生が話す時間より、子どもがつくったものなどで話す機会が増えています。結果的に子どもたちの学びは大きくアップデートされたと感じています。
全員が中学受験する学校と言われますが、受験と相性が悪そうですが・・・
当然、教え方・学び方を転換することは簡単ではありませんでした。しかし、取り組み後の結果を見た時に、実績が下がることはなく、むしろ良くなっているのではないかと感じています。いわゆる受験指導に特化しなくても、身につくものが間違いなくあると感じています。
Google Classroom で保護者とのつながりを
特徴的な利活用はありますか?
家庭とのつながり方も変わりました。以前はメールだけの連絡手段でしたが、 今は Google Classroom を保護者との情報共有プラットフォームとして使用しています。学校だよりや学年通信の配信、各種アンケートの配布や回収など全学年全クラスで利活用しています。
Android のスマホを利用している保護者がアカウントの切り替えに戸惑い情報が見れないというトラブルもありましたが、概ね有効利用できているのではないかと思います。
子どもの Google 利活用で特徴はありますか?
子どもたちにアカウントを発行していないので Google Classroom が使えません。そのため、 Google サイト をよく利活用しています。調べ学習で使うURLなどをサイトにまとめて共有するなど、配布と回収はできませんが、 Google Classroom のような使い方を各種アプリで工夫しています。ただ、ルーブリックの機能や有償版で使える各種機能は子どもたちの学びにも教員の業務軽減にも役立つと感じているので、利活用を検討したいと考えています。
子どもたちが触れている Google のアプリは何ですか?
子どもたちはiPadを持っているので、基本的はAppleのアプリを多く利活用しています。ただ 授業アンケートの回収やテスト機能などを用いて Googleフォーム を利用する頻度は高いです。そして、最も触れているGoogleのアプリは「YouTube Kids」ですね。
昨年度までは利用を許可していませんでしたが、フィルターを潜り抜けて動画視聴する子どもが増加しました。その危険性を鑑みて、今年度からは YouTube Kids に関してはインストール可能としています。
テクノロジーは「人と人を繋ぐもの」
何か課題はありますか?
学び方が変わったことで、子どもたちが発表する機会や成果物が増えてきました。そのたびに先生たちはフィードバックをルーブリックを用いています。さらに通常の成績表もあるので、とても負担が増えています。子どもたちにアウトプットする機会を増やすことは非常に良い傾向なのですが、これを上手に軽減することはできないかに頭を悩ませています。
この軽減に生成AIを用いることも案のひとつではあり、大幅な時短にはなるのは間違いないですが、子どもたちは「先生のコメントに関心がある」ので、生成AIの使い方についても注意が必要だとは感じています。
これから取り組みたいことは何ですか?
自分の授業をより良いものにしたいと考えています。ある学校を視察させていただいたときに「データサイエンスの授業」に触れました。小学校からでも統計資料を使った学習が大事なのではないかと感じ、教材研究をはじめました。
また生成AIについても利活用したい思いが強く、これらを掛け合わせて、学年に応じたレベルで学習できるような授業案を考えています。
例えば日本の総人口のグラフから読み取れることを生成Aiに投げてみたり、自分で読み取ったことを生成AIと対話してみたり、未来の予想を生成AIと一緒に考えてみたりなどすることで面白く「統計とAI」を混ぜた授業ができるのではないかと考えています。
小学生と生成AIの上手な付き合い方については、まだまだ検討中ですが、よきパートナーとしての利活用を模索したいと考えています。
先生にとって Google などのテクノロジーとは何ですか?
「人と人を繋ぐもの」だと思います。校務での先生同士のつながり、教室での生徒とのつながり。何かをしようとした時に力を貸してくれる、繋いでくれる。それが私にってのテクノロジー利活用です。
これからはテクノロジーはますます無くてなならない存在になると思うので、子どもたちにも良き使い手になって欲しいと願っています。
そのために、私が学び続ける姿を見せ続けたいと思います。
宮田 好展
洗足学園小学校教諭。ICT統括
1977年、群馬県伊勢崎市生まれ。2001年早稲田大学教育学部教育学科教育学専修卒業。2002年玉川大学通信教育課程中退。同年より、洗足学園小学校にて勤務。Google Certified Professional ChromeOS Administrator、DaVinci Resolve認定トレーナー、生成AIパスポートなど、教育とテクノロジーに関わる実践活動を展開。小学校でも実践できる「データサイエンスとAI」について研究中。