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vol.5|学校と授業の意味を問い続ける先に

2022年10月11日公開記事の再掲となります。

学校でのICT活用に訪れたさまざまな変化を、Google との出会いを切り口に語る本シリーズ。今回は、学校と授業のあり方を追求し続けている、加藤学園 暁秀中学・高等学校(静岡県)の一木 綾先生にインタビューしました。

Google とわたし

貴学ではいつからGoogleのツールを使うようになったのですか?

2014年に今の学校に着任し、翌2015年から国際バカロレアプログラム(IB)を導入しているクラスを受け持つことになりました。

当時、生徒端末はラックに保管されていて、生徒たちが各自使っていましたね。その時は Google は使っていなかったです。

2017年度、中学2年のαコース(いわゆる特進クラス)を受け持ちました。その時、紙の新聞スクラップをやっていたのですが、紙での管理は生徒も私もお互いに大変だったんですよ!それで、保護者会で話をして、授業用のアカウント(一般の @gmail.com のアカウント)を取得してもらいました。

新聞スクラップを生徒はドキュメントで作成して、私のドライブに保管するようにしました。他の生徒の記事を読んで相互にコメントをしたりもやりやすかったです。この方法を進めながら、生徒たちからのフィードバックをもらい、実践のシェアを学内で行いました。それをきっかけに興味を持ってくれた先生たちもいたようです。

2018年には全生徒に Google アカウントが配布されました。先生たちが使い始めると、容量過多だったサーバーが無制限の恩恵を受けて使いやすくなりました。その頃、 GEGが開催したGEG LANDというイベントに職場から3人で参加したんです。そんなにICTが得意ではなかった先輩の先生が「これは面白そうだ」と言ってくれて、その夏にGEG Shonanさんの「押しかけWS」を職員研修として実施しました。

対話を生み出す「共有」の価値

特によく使われているツールはありますか?

Classroom を使っている先生たちが多いと思います。
先生だけが入っている Classroom があって、講師の先生も入っているんです。そこで全学の連絡等は行っています。分掌や教科、部活や委員会ごとにも Classroom があるので、資料の共有等もスムーズです。

あと、生徒たちがYouTubeで勉強している姿もよく見るようになりました。スタサプの先生たちは面白くないなんて言ってます(笑) 葉一さんとかは人気ですよ。子供たちが学びたいと思った時に学べるのが良いですよね。色んな人の色んなやり方が YouTube 上にはありますし。どの子にどの方法が合うのかなんてわからないじゃないですか。だから、1人のすごい YouTuber の動画をこちらで選んで見せれば良いというのは違う気がするんです。

一木先生は国語科ですが、国語だとどのような使い方をしていますか?

そうですね。まず、私は板書はほとんどしないんです。レクチャーに時間をかけたくないというのが理由で、読解に関しては板書の必要はないと考えているんです。インプットのところはスライドで解説をして、Classroom にそのスライドを載せて共有します。あとはグループやペア、クラス全体でディスカッションしながら理解を深めていくという形です。

Google のツールを使うと、そういった意見の共有がしやすいと思います。国語は対話してなんぼ!だと思うのですが、思春期の子供たちに手を挙げて「は〜い」はなかなか難しいのですよ。中3の「故郷」をやった時、作品理解に必要だと思うことをテーマにグループで探究してスライドにまとめてもらいました。それを資料集として作品を読み進めていく形にしたんです。

そして、共有したドキュメントにディスカッションを記録をして、授業で気になったことや面白かったことなどをその都度ドキュメントの中にコメントで書いてもらいました。国語の授業って、うっかりすると国語が出来る子と先生の対話になりがちなんですよね。この時の生徒たちの反応は新発見でした!音声だけでなく、並行してテキスト等でも対話ができるんだなって。

あとは、うちの学校の生徒って演劇とかが好きな生徒が多いんですよ。だから、詩をイメージに合うようになりきって読んで、音声だけ録音して提出するとかも楽しそうに取り組んでました。古文の時も納得するように読んで提出するという課題を出した時、学校では恥ずかしいけど、家でなら読めるって子もいて、それが記録できるのも利点です。暗唱テストとかもこれまでもやってましたけど、廊下まで行列になっちゃったりしてたんですよね!それが、この方法を使う事でお互いにやりやすくなりました。

国語とICTは相性が悪いと思われるようなのですが、うちの学校では国語の先生が圧倒的に Google のツールを使っていました。作文で手書きを課すことで、国語を嫌いになる子が多いと思います。例えば、200字の記述をする時、手書きでやることのハードルは高いです。書き直しもしづらいですし。ある程度の量の文章を「意欲的に書く力」を養いたいならドキュメントを使うべきです。

学び方の変化を捉える

確かにそうですね!書き直すのが面倒な方法ではより良いものを書こう!という気持ちにはなれないですもんね...

私も含めて、一方通行の授業をやってきてしまったんですよね。若い先生たちで、教育学部などで新しい手法自体を学んできた人たちは良いかもしれないけど、そういう機会でも無いと自分達が受けてきた授業が「基本」になってしまいますから。

生徒だけが活発で、教師は見守るだけ...みたいな光景って以前はありえなかったけど、今はそうじゃないですよね。先生たちの学び方も、以前は学会に入ったり、個人的に繋がらないと学ぶ機会がなかなか作れなかったけど、今はネットやSNSによって先生たちも勉強しやすい環境にあると思います。

コロナ禍での休校中さまざまな形式のオンライン授業をしましたが、対面で...その場でやる空気感って大事だということの再確認をしました。発達段階やその子の性格にもよるけど、周りに誰かがいるからできる部分ってあると思うんです。多くの子は一人じゃできないんじゃないかな。友達同士でLINEをただつなげて勉強する生徒たちもいますしね。

学校の授業ってなんだろう?は常に問い続けています。知識の伝達だけということはまずないですが、グループワークやコミュニケーションだけというのもなんか違うかなって...。学校の存在意義、これからも考え続けて、実践し続けていくしかないんでしょうね。


一木 綾
加藤学園 暁秀中学・高等学校教諭(国語科)
GEG Fuji Member
2014年加藤学園暁秀中学校・高等学校へ入職。2015年から国際バカロレア(IB)MYP(Middle Years Program)の国語を担当。2020年からはDP(Diploma Program)の言語A(Literature)も担当している。
NIE(Newspaper in Education)やICTを活用した国語の授業を模索し、 ICTを活用したさまざまなアウトプット(動画やプレゼンテーション、音読など)を生徒たちと一緒に楽しんできたなかで、ここ数年は、「書くこと」のスキル向上を意識した授業デザインにも力を入れている。
2019年に静岡県と山梨県に在住在勤の教員を中心とした「GEG Fuji」に立ち上げメンバーとして参加。

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