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vol.6|学習者目線を第一に考える

2022年11月14日公開記事の再掲となります。

学校でのICT活用に訪れたさまざまな変化を、Google との出会いを切り口に語る本シリーズ。今回は、常に教育界の最前線を走る、関西学院千里国際中等部・高等部(大阪府)の岡本竜平先生にインタビューしました。

Google とわたし

2011年前任校である関西大学中等部・高等部の開校2年目から勤めましたが、その時にはすでに学校としてGoogle のツールを使用していて、全員ではないですが、使いたい人は使っているという状態でした。

僕自身は、正直言ってテクノロジーを教員生活で使うとは全く想像もしていなかったんですよ。得意な方でもなかったですし。でも、誰かの授業をなぞる...みたいなことをしたくないなと感じていた僕にとっては、使わない手はない!という感じで、使うこと自体への抵抗はなかったです。

得意な方ではなかったんですね!それは意外でした。岡本先生の今ちょっとハマっているツールとかはありますか??

Google サイトですかね。
天気の単元で、日本の天気の特徴を科学的に説明できるようになることを目的に動画をつくったりしていたんですけど、グループで取り組んだ時に動画制作のスキルが高い生徒がいるグループの点数が高くなってしまいがちだったんです。そこで、サイトをクラスで作る形に変えてみました。

すると、クラスに最も貢献することができる立場を彼ら一人ひとりで考え、学習に取り組んでいました。例えば、動画作りが得意な子は動画を担当したり、絵が好きな子は4コマ漫画で表現してみたりしていました。動画も含めてさまざまなツールと紐づけられるサイトであれば、それぞれの「得意」を生かして取り組むことができる面白さを感じました。

長年、ICTを利活用してきている岡本先生ですが、ご自身の担当されている「理科」との相性という点ではどうですか?

データを扱う理科という教科とICTとの相性っていうのは良い方だと思います。
データを取るのももちろんですが、それを分析したり、共有したり、1人1人が自然にデータに触れられる環境は理科という教科にとってはかなり有効だと思います。
あとは「色の変化」とかも理科の中ではよく出てきますよね。その時に「青と緑の間」と書くより、色を写真で見せた方が圧倒的にわかりやすいと思いませんか。

専門的成長主任の役割とは

少しICTの話からは離れますが、岡本先生は校内では新しい役職である「専門的成長(Professional Growth)主任」として教員対象の研修会をデザインしたりしているんですよね?

今年度から着任したのですが、この学校が30年続けてきたことの良い部分とアップデートするべき部分に気づくために「学ぶ学校」になる必要があると考えています。

教員の専門性という面では、世の中が変わってきているので教員もアップデートした方が良いのですが、なかなかその機会がないので、学校として専門性を高める機会、場所をつくる仕事をしています。

例えば、以前まで行っていた職員会議が無くなり、その代わりに週に1回、先生方の専門性を上げるワークショップを「アイデアフォーラム(Idea Forum)」という名前で、放課後に実施しています。ただ、「強制」としてしまうのは息苦しいので、参加は自由なんです。

どういった学びや視点が今、そしてこれから必要なのかということを考えながら、それを先生方それぞれがどのように実践に落とし込めるのかを研究し続けています。

最近では、これだけ多様な生徒を前にして、教員側がやらせたいことをやるのではなく「より個別化を意識した授業をすべきではないか」ということをテーマにしてワークショップを実施したりしています。

自分の受けたことのない授業をつくりたい

岡本先生は「自分の受けたことのない授業をつくりたい」と以前からおっしゃっていますが、それってどのようにつくっていけるものなんですか?

もちろん、変わるものもあれば、変わらないものもあって良いと思いますよ。
ただ、ICTやデバイスなどは自分が学生だった時は当たり前にあるものではなかったんですよね。それが学習者にとって有効なものになる可能性があるんだったら、どんどん取り入れていきたい!と考えています。

例えば、理科の実験だったら教科書通りに進めるのではなく、何が一番重要であり時間をかけて扱うべきかを最初に考えます。さらに「学校でみんなで実施するべきことは何か」を最初に取り出す感じですかね。

そして、その部分について教師がいかに「一方向的に知識を伝達しない」で子どもたちの学びをデザインできるかを考えています。その授業デザインにおいてICT(Google)はかなり役に立つんですよね。

あとは、とにかく子どもたち目線での興味関心は気にかけますかね...。例えば、カルメ焼き...教科書には出てきますけど、僕らですらあんまり食べる機会ないですよね?それだったら、同じような考察をする単元だとしてもホットケーキの方がイメージしやすいかな?とか。

お話を伺っていると、とても「学習者目線」なのがわかります。 他の先生方もそうなんですか?

校長から常に問いかけられていますからね。最近、少し言葉が似てきたような気がします。

教育ICTは教員と生徒が授業で使うことを想定して作られているはずだと思っているので、そもそも「学習者目線」のはずだと考えているし、そうであって欲しいと感じています。

ただ、最近感じていることとしては、ICT文脈の話がちょっと学習者を置き去りにしがちかなということですね。そもそもどうして「学び」にICTを取り入れたかったんだっけ?って感じています。

ICTの導入が進められる時に、働き方改革とか管理のしやすさとかについつい興味関心が行ってしまいがちですが、本来の「子どもたちがどのように使うか」という視点が忘れられがちではないかと思います。

利活用をはじめた頃は、子どもたちがこれを使うようになったら、学びはこんな風に面白くなるのでは?!ともっとわくわくしていた気がするんですよね。振り返ると「学習者の視点」って大事だなと改めて感じています。

本校では、 Google Workspace for Education の有償エディション 「Education Plus」を導入していますが、「学習者にとってどうすべきか」を考えれば迷う余地なしという感じでした。生徒たちがより良いツールを使えるからこそ拡がる学びがあるという判断でした。

最近、色々と学ばせてもらっている中で感じているのは、本質は何なのかを見つめることの大切さですね。
ICTも授業の実践方法もあくまで道具でしかないので、目的がどこにあるのかを常に問い続けることが何においても不可欠なんだと思います。

岡本竜平
関西学院千里国際中等部・高等部理科教諭(専門的成長主任)
GEG 高槻リーダー|Apple Distinguished Educator 2015。
関西大学中等部・高等部にて6年間勤務した後、2017年より母校である関西学院千里国際中等部・高等部に赴任。中学では理科、高校では化学を担当。日本だけでなく世界の教育者と交流を深め、広い視野を持って教育を行う。日々の授業ではICTを活用しながら、創造性を育むような実践を展開している。


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