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vol.11|テクノロジーを日常のあたりまえに

2023年4月10日公開記事の再掲となります。

学校でのICT活用に訪れたさまざまな変化を、Google との出会いを切り口に語る本シリーズ。今回はGEG Hiroshima City 共同リーダーとして、さらには Google 認定トレーナーとしても活躍する近畿大学附属広島高等学校・中学校 福山校の鳥生浩紀先生にインタビューしました。

今年で教員生活は26年目です。いまは教務部長として担任などは持たず、学内のさまざまな業務を担当しています。2014年からの3年間は系列校の和歌山にいました。そのため、ちょうど全国でICT利活用の種が広がり始めた時期に、現在の学校にいなかったことが残念ではありましたが、Google と出会ったことで少しづつ変わり始めました。

Google とわたし

鳥生先生と Google との出会いは何がきっかけだったのでしょうか?

2018年の秋くらいに Google と出会いました。どうやら法人が契約をしていて、アカウントの発行ができるらしいぞという話を聞いたのが最初でしたね。つまり「気がついたら使える状態になっていた」というのが出会いです。

こんなに面白いツールが使えるのであれば、生徒のスマホで使ってみようかなというのが私にとっては最初の一歩でしたし、面白いなと感じた周囲の先生たちも Classroom などで少しづつ生徒と使い始めていきました。

そんな先生たちが Google を使いはじめて驚いたのが、いまでは当たり前になっている「同時(共同)編集」の機能でした。当時のシステムでは、他の先生がファイルを開いていると他の先生が同時に編集することができませんでした。そのため、近くまで行ったり、電話をしたりしてファイルを閉じるようにお願いしていました。
この時に「共有の意味(考え方)」が大きく変わったことを覚えています。今までは、あくまで資料(ファイル)は自分の手元に置いておき、そのファイルを他の先生にも共有するという考え方でした。
しかし、 Google を使い始めることで、資料はクラウド保存し、それをみんなで共有して協働するという新たな考え方に出会いました。この変化は非常に大きかったと思います。

普段使いのICT

どういった使い方からはじめたのですか?

最初は生徒のスマホだったので、 Classroom を使った課題の配布と回収からはじめました。生徒から撮影したノートが送られてきたのですが、これをすごく短時間で確認して返却することができ、とにかく便利であると実感しました。

ただ、現在もいい意味でそのレベルを超えていません。どうしてもICT利活用をいうと「いままでできなかったものすごいことができるようになる」というイメージを持つ人も多いかもしれませんが、私はそうは思っていません。

新しいツールを手にすると、それを使って何かしたくなる気持ちになるのですが、あくまでツールなので目的は別にあったはずなんですよね。その目的を達成するために便利に使い始めたツールのはずなのに、気がつくとそのツールを使って何をしようか考え始めてしまう。さらになにか凄いことをしようと考え始めてしまう。それは違うと思っています。

どうしても世にでてくる活用事例は「目立つネタ」が多くなってしまいますが、日常ではもっと当たり前の、もっとシンプルな利用が望ましいのではないかと感じています。

数学の授業でも生徒の様子を観て「いま簡単な小テストをしたいな」と思う時があるのですが、今までは教室に放置されているような古紙を小さく切って配り、問題を板書して実施するようなことをしていました。

それが今では、 Classroom で質問機能を使うことですぐにでもできてしまう。その場の思いつきで授業を進化させることができる。非常に面白いし、便利だなと実感しています。

もちろん、それなりの準備は必要ですが「こういうことができる」と知っていることで授業デザインにも変化がありました。

すごく普段使いのICTの活用方法ですね

これくらいで良いのだと思います。すごい先生はすごい使い方をしていますが、難しいことをしようとしてもうまくはいかない。

とにかくシンプルに使い続けることで、気がつくと少し難しいことができるようになる。
そうした使い方が良いのではないかと GEG Hiroshima City 共同リーダーの今田英樹先生とも話をしたりしています。認定トレーナーとしてもですが、普通のことを、普通にするために使える、ちょっと良いものだよという広め方をしたいと思っています。

校内でも地道に少しづつ、とにかくシンプルにICTツールによって教育活動を代替・強化するところまでは手応えを感じてはいます。ただ、その先にある変容や再定義には壁が高く、停滞している感じを受けていますが、生徒たちにとってもICTの利活用が当たり前になることで、その先の景色が見えるようになるのではないかと期待しています。

まだまだ時間が必要だと思いますが、先生がICTに慣れ始めていて、生徒たちが楽しそうに使っている現状はすごく良い時間でもあります。保護者の方からも様々な意見を伺うので、みんなで一緒により良い学習環境を構築していきたいと思います。

お気に入りのツールはありますか?

YouTubeが大好きです。保護者からはまだまだ「悪」であるというご意見が多いのですが、学びに役立つ動画も数多くあるので変えていきたいと思っています。

先日も「学びに役立つYouTube再生リストを共有しよう」という企画に生徒が動画をキュレーションして応募していました。これも少しづつですが、学びに役立つということを伝えていきたいですし、YouTubeを通じて「魅力的なひと」とも多く出会って欲しいと考えています。

また、この半年で急激に進化したAIについても可能性を感じています。教務部長として新入生に話す内容も変わりました。今までは「AIに負けないように」とか「シンギュラリティがくる」というような話をしていましたが「AIは何ができるか」ということについては示すことはできませんでした。

しかし、最近では文章生成AIを実際に見せることで「AIとはこういうこともできます」と伝えることもできるようになりました。

さらに「君たちにも使うことができる」と伝えることで、「AIに負けないように」ではなく、より専門性を高めることで「AIを効果的に使うことができるようになりましょう」という話をするようになりました。

新年度から利活用をはじめる先生たちにアドバイスはありますか?

Google の良さは敷居がものすごく低く、手軽で、使いやすいことです。「使おう」と意気込んでつかうものではなく、近くにあることで「使ってみたら便利」と気づくものなので、気がついたら使えるようになっていると思います。

GEG(Google Educatior Group)も47都道府県にありますし、みなさんの近くには楽しんでテクノロジーを利活用している先生がいますので、困ったらぜひアクセスしてみてください。

一緒にワクワクできる仲間を見つけることができると思います。

鳥生 浩紀
近畿大学附属広島高等学校・中学校 福山校教務部長
GEG Hiroshima City共同リーダー|Google 認定トレーナー
校内では教務部、ICT教育推進担当として従事。教科指導ではチョーク&トークで行う従来の手法を生かしつつ、ICTを活用することで今まではできなかったチャレンジを生徒と一緒にワクワクしながら進めている。また、 GEG Hiroshima City 共同リーダー、Google 認定トレーナー としてICT教育の可能性をSNSやイベント等で発信している。

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