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シゴトデキナイ星からやってきたのに、調子に乗って昇進したおっさんの話

奥さんの妊娠と昇進


奥さんの妊娠が発覚して少ししたタイミングで、昇進の話がやってきました。
前回の話はこちら。

最初の記事はこちら。

相談

 
昇進のことは、真っ先に奥さんに報告と相談をした。
相談の内容は出産後の家事育児について。
支配人というのは、偉そうにふんぞり返っているか、メールを打っているかしか仕事をしていないのに、やたら遅くまで残っているという不思議な生き物である。
しかし、その生態を観察してみると、やらねばならないことは本当に多岐にわたる。

組織の戦略作成、戦略遂行のためのチーム作り、メンバー育成、実際のサービスが戦略に沿っているか厳しく管理し、その他にも総務から財務まで、自施設についての守備範囲は全盛期のアライバコンビ並みに広くなければならない。
突発的なクレームや施設トラブル、取材などにも対応しなければならず、休みだから行かないという訳にも行かない。自分が得意とするストライクゾーンは2003年阪神優勝頃の今岡並みに広くなければならない。

そんな働き方で、子供が産まれてから家のことを出来るだろうか、いや出来まい(反語)。
とはいえ、家のことについては子供が出来るまでは概ね半分ずつやってきていた。
僕はシフト制なので、決まった曜日の休みはなく、奥さんは土日休み。休みが被らない時には、休みの時に溜まっている洗濯や掃除をする。晩御飯は僕が休みの時に3日間分くらい作りだめして、それがなくなったら奥さんが作って補充…という具合だ。

基本的に家事についてはそのルーティンを踏襲しつつ、休みで出なくてはならない時は家事をお願いしたい、と奥さんに相談。
奥さんの返事は快諾。仕事については基本お互い口を出さないが、やりたいことは応援する。そんなスタンス。
本当に僕には出来すぎた奥さんである。


恐怖の産後クライシスイマジネーション

そもそも、なぜ僕が昇進のことを奥さんに相談したのか。
その背景にあったのは奥さんを気遣う心遣い、などでではなく、出産、育児の過程を知る中で僕の中に産み付けられた、いわゆる「産後クライシス」というものへの恐怖だった。
出産後のホルモンバランスの乱れ、体調の変化、何より自分がいないと死んでしまう新しい生命のプレッシャーなどで、不安定になりやすい女性のメンタルに、右も左もわからない、コドモワカラナイ星人と化してしまう男性がかけ合わさることで生み出される「産後クライシス」という災害。
僕は産後の家を想像するに度に、この産後クライシスへの恐怖が雪だるま式に増していった。

元来気分の浮き沈みが激しく、機嫌が悪くなると手の付けられないところが唯一の欠点である奥さんが、産後クライシスを迎えたら、我が家は破滅する。
その恐怖感と、何とかしなければという自己保身が働き、昇進するにあたって、出産後の家のことを奥さんに相談するという発想に至ったのである。

そう、何度も言うが、あくまで奥さんへの気遣いではなく、自己保身。
僕の意識が少しでも奥さんを気遣うことや、産まれてくる子供に向いていれば、産後の家庭環境はもっとずっとましなものになっていたかもしれない。


相手を気遣う皮を被った自己保身。
これほど性質の悪いものも世の中まぁそんなにない。
それも、本人はまだ自己保身だということに気づいていないのが、状況を悪化させる上質な天然燃料になるのである。

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