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頻繁に夢を見るタイプ

 ーーAが後ろから小声でささやく。
「こっちから行こう!」
 私は自転車をおりて向きを変え、Aを追いかける。彼の背中はなぜあんなに白く反射しているのか。まぶしい。ワイシャツだ、彼は制服を着ているのだ。私たちはまだ高校生らしい。学校まで、ふたりでほんのちょっと遠回りするだけ。胸が踊るーー。

 予想に反して、そんな淡い夢を見た。Aは初恋の人である。もう、夢でしか会えない人である。

 私は頻繁に夢を見るタイプのようだ。内容によって、ぐったりと疲労させられることもあれば、多幸感に包まれたり、脳内を超絶すっきりはっきり整理整頓してくれたりもする。

 私の長所といえば「早寝、早起き」くらいしかないのだけれど、昨夜はテレビで放映していたアニメをなんとなく観てしまって、床に就いたのは23時過ぎであった。こういうときは脳が休まらず、自分のパターンでいうと悪夢にうなされることが多い。
 子供の頃、円谷プロの映画を観たときには「怪獣の着ぐるみを紛失してしまって撮影に間に合わないどうしよう!」という夢に肝を冷やしたし、翌日になにか大事な予定(例えば遠足とか)があって緊張していれば、ほぼ確実に「みんなの前で漏らしてしまう」夢を見る。神経が貧弱なのだ。

 なので昨夜も、いい夢は見られそうにないな、と覚悟していた。麦わらの一味が私の安眠を妨害しにやって来るに違いない、そうなったらもう無抵抗で、私はあの恐ろしいゴムゴム技にボコられるしかないのだ、と。
(アニメ文化にうといので善玉と悪玉の見分けがついておりません)

 そんな予想に反しての、昨夜は初恋の人の登場であった。自転車をこぐ彼の背中を、一心に追いかける、あの高揚感。独り身の者にとって、初恋の記憶というのはなんという癒しであろうか。ふたりが若いということ。若かったということ。このことだけはボケても忘れずにいられたらな、などと未練がましく思ったりするのであるーー。

 ちなみに私は、夢の中でおどろくほどうまいピザを食べたこともある。目覚めたときのあの満足感といったら! 太陽を食べたような気分だ! あんなに美味しいピザを焼く人を、私は現実で知らない!


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