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あなたはなぜ掃除機を持っているのか?

 私は掃除機を持っていない。もともと「無くても生活できるな」と思っていたところ、今年の春にいよいよ壊れたので買い換えはしなかった。我が家には掃除機は必要ない。そのような仕様になっている。

 例えば自宅がとんでもなく広かったり、絨毯なんかを敷いていたら、掃除機は必須でしょうね。我が家はたかだか40平米くらいのものだ。フローリング部分は毎朝フロアシートでひとまわりし、週に2~3回ほど(筋トレを兼ねて)雑巾で水拭きする。(夏は毎日やりましょう。はい)和室は使用していないので、こちらもほうきと雑巾で間に合っている。


 それぞれの生活スタイルに合わせて必要な道具も違ってくるわけであるが、案外、盲点だなと思うのが「掃除機を所有しているおかげで掃除がおろそかになっているお宅」である。

 テレビショッピングなんかをボケッと眺めていると、掃除機ひとつで家中がピカピカになると勘違いしてしまう人は多いんじゃないかな。「奥さん!この掃除機があれば掃除をする必要がないんです!」とでも言っているようだ。
 中学生の頃、同じクラスの女の子が「お母さんが訪問販売に騙されて40万円の掃除機を借金して買ってしまった」と言って泣いていた。子供ながらにみんなで「クーリングオフ!クーリングオフ!」と叫んだのを覚えている。


 嫌なことを言うが、ほうきと雑巾で家はピカピカになるのである。その手間を省こうと人類は掃除機を発明したわけであるが、掃除機が担うのはあくまでも床のホコリを吸うことのみだ。掃除機をかけてそれで掃除をした気でいる人のお宅は、残念ながら不衛生なままである。汚いし、なにより臭いーー。

 私の母もいつか言っていた。「ロボット掃除機ってどんなもんかね」と。家中が物で溢れ、かろうじて見えている床の部分を、何十年という垢やペットの糞尿の染み付いたカーペットの上を、ロボット掃除機に行ったり来たりしてもらえば自分の生活が良くなる、なんてことをぼんやり考えていたりするのだ。最新の掃除道具を買えば掃除しなくても許される、物を増やせば状況が改善できる、というのがゴミ屋敷の住人の理論である。
(当然ながらそういった人間は、ロボット掃除機が引き起こす火災事故などの危険性についても微塵も想像力を持たないだろう)


 あなたはなぜ掃除機を持っているのか? おそらくお洒落な絨毯が敷いてあったり、床にそれなりに物が置いてあったり、掃除機(吸引力)がなければホコリを除去できない環境なんじゃないかな。それ自体は何も問題ないね。「うちは赤ちゃんもいるし物も多いから、人一倍、掃除をがんばっています!」というのなら素晴らしい。

 しかし「掃除機があれば楽が出来る」と勘違いしている人は大問題だ。前述したように掃除機は床のホコリを取るものであって、ほうきやフロアシートと同列のものだ。その先に「水拭き」があるのである。そもそも掃除は床だけの問題ではない。

 掃除という生きていくために誰もがやらなくてはいけない当たり前のことを「大変」と感じるのは、それを身に付けないまま大人になってしまったというシンプルな理由による。そんな人が掃除機を買ってみたところで、どうだ。
 私の知人宅も、玄関を開けた途端に廊下に物が積み上げてあったりするのだが、それらと一緒にダイソンの掃除機も転がっている。掃除が出来ないどころか、どうやら掃除機の収納場所さえ決まっていないものらしいーー。
 それを当たり前と思って育つ子供達な。親は開き直ってしまえばいいけど、子供は苦労するだろうなぁ。


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