爆音とディスコ風の下品な閃光
今夜はどこの地域でも花火大会だったようなのだ。全国的に相変わらずの雨だろうに、見物客なんているんだろうか。いるんだろうなぁ。
私の部屋からは花火は見えそうで見えない。爆音とともに、上空にディスコ風の下品な閃光が反射しているだけ。
カラスたちがパニックを起こして夜空を飛びまわっている。かわいそうに、「変なのが来たぞ、雷だ、鉄砲だ! ドンパチやられるぞ!」そんなことを言い合っているのかも知れない。
「土砂災害に気を付けましょう」とか、「河川へは絶対に近づかないでください」とか、そんなことは今夜は誰も言ってはいけないのである。こぞって河川へと駆けつけるのである。
みんなが「天皇万歳!」と叫んで、勇んで崖から飛び降りているところへ、「危ないですよ」なんてまともなことを言っちゃったら、こっちの身が危ない。勝手にやってもらうしかないのだ。
世の中には、爆音が鳴るだけで、ちかちか電飾を光らせるだけで、人混みを目にしただけで、夜釣り船の電球に吸い寄せられるイカのごとく興奮して我を失ってしまう人々がいる。(暴走族や野次馬などは分かりやすい例だ)
彼らは自分自身をコントロールする力が弱いために、常に欲望を発散させるチャンスを狙っていて、なにかあるとすぐに「気持ちいいこと」が得られるのではないかと、反射的によだれを垂らしてしまうのだ。
ーー簡単だ。
花火大会だとか、祭りだとか、地域の伝統だとか、日本の文化だとか、神様だとか、神聖だとか、オリンピックだとか、甲子園だとか、努力だとか、絆だとかーー。
庶民にとって気持ちのいい言葉を並べれば、裏で悪事を働くのはじつに簡単だ。
我々はいつでも、目の前に着火材をぶら下げられているのである。自分の中にドロドロとした油を大量に抱えている人は、火傷の危険が大いにある。
さらさらとした清流のような心でいたいものだ。