新規事業企画の立て方(事業実現方法編)
第1回目は新規事業を立てる前提となる「企業の存在理由」について、第2回は新規事業を企画するにあたっての「企画フロー」についてまとめてきた。
第3回目の今回は、「事業実現とはどうやって進めるものなのか」、その理念について考えてみたい。
事業とは企業の目指す社会を実現する手段
新規事業を立案するにあたっては第1回で示した通り、「企業の存在理由」が重要となる。なぜならその企業が存在するのはその企業が社会に対して解決すべき課題の存在を認知し、その課題解決を求める人々に対し事業として解決手段を提供することで課題の解決を実現し、その結果より良い社会を生み出していくためだからである。
つまり、事業とは企業が目指す社会を実現するための「手段」だと言える。だからこそ、企業が認知する社会課題領域が拡大していくにつれ、本来事業とは増えていくモノなのである。
では、事業とはどうやって実現していくものなのだろうか?
事業とはどうやって実現していくのか?
まずは以下の図を見てもらいたい。
これは、筆者が思う事業創出の概念(何を考えたら「事業」が企画できるか)と、それを実現していくために何が必要かを示している。
まず、事業創出の必要条件として
理想像
How to
What to do
の3つがあると考えている。
理想像とは何か?
「理想像」とは、その企業が「目指す理想の社会像」に対し、具体的な領域での理想像を指す。
例えばトヨタ自動車の例で言えば「目指す理想の社会像」として「モビリティを社会の可能性に変える。」を挙げており、それを実現するための課題の一つを金融領域における「資金的な問題で生じるモビリティの利用機会損失の無い社会」と捉え、トヨタファイナンス事業を創出している。
この「企業が目指す理想の社会像から考えた社会課題、それを解決した時に得られる理想の社会像」が事業企画の「核」となる。
How toとは何か?
「How to」とは上記で考えた「理想の社会像」がどうやったら実現可能となるか、つまりは「理想の社会像実現手段創出」を指す。
これを提供していくことがすなわち「事業」となるため、理想の社会像実現、そこに至るのを阻む課題を起点に、課題解決の方法、それを実現するための手段系、手段系を提供するための方法、手段系提供を維持・運営していくための必要費用、必要費用獲得のための対価獲得手段といった具体的な実現手段を考えていくこととなる。
What to doとは何か?
最後に「What to do」。これはすなわち「How to」で考えた社会実現手段を「誰が」「何を」することで実現していくのか、その「役割分担」を定義し、事業実現に向けた関与者に対し共有、実現していくことである。
どんなに素晴らしい事業プランを考えても、それが実現されなければそれはただの「絵に描いた餅」。だからこそ、理想像、How toと企画してきた事業を、「誰が」「どのような役割を担う」ことで実現していくかを示すこのWhat to doの企画は事業実現に非常に重要なポイントと言える。
事業実現とはアイデアのリレーである
事業実現とは、詰まるところ事業の発案者(=I)だけのものであった事業アイデア(理念、How to)をWhat to doに落とし込み、理想の社会実現のために関与する全ての人(=We)と共有、役割分担して実現していくコトである。
まずは共感を以て事業化メンバーとの共有アイデアにし、事業実現を目指す。その次は事業化メンバーだけでなし得ない「コト」の実現のために社内外の協力者と共感を以て共有アイデアする…と事業企画を実現させるために関与する全ての人で共有アイデアとし、役割を分担して商品・サービスとして提供する。
そして最後にはその商品・サービスを利用いただきたいお客様にも「理想の社会像」に共感いただき、実際に商品・サービスを利用いただくことで、理想の社会を実現していくことがその事業における最終到達点と言える。
これは、まさに「理想の社会像に対する共感」というリレーのバトンを渡し続けながら関与範囲を拡大し「理想の社会」を生み出していくことに相違ない。
アイデアリレーを円滑にする方法=マーケティング
発案者が想像した時点では、理想像はあくまで発案者の想いでしかない。しかし、その想いが多くのお客様の理想像と共通だったらどうだろうか?きっと理想の社会像をより確実に実現することに寄与するだろう。
この、「理想の社会像」をお客様と共有するための活動こそ「マーケティング」の本質なんだと筆者は思う。
上記図のように、マーケティングには大きく「市場の調査」と「広告・宣伝・ブランディング」の2つがある。
前者は先述の「理想の社会像の一致」につながる。つまり、お客様が望む「理想の社会像(=ニーズ)」を市場調査を通じて把握、それをベースに事業の企画をすることで、より効率的に理想の社会像を実装、拡大することが可能となる。
そして後者は発案者、そして関与者全てが望んだ「理想の社会像」をお客様へ伝達し、お客様に期待する「What to do」を実現いただき、理想の社会像を実現するための手段と言える。
以上の通り、マーケティングとは「理想の社会像」を事業の発案者、関与者、そしてお客様と共有していくための活動と捉えると非常に理解しやすくなる。
事業の実現とは「理想の社会像をみんなで共有し、実現すること」
さて、ここまで見てきていただき事業とは「理想の社会像をチームメンバー、社内外の関与者、そしてお客様と共有し、実現していくこと」だと言うことがなんとなくご理解いただけたと思う。
ともすると事業とは「いくら儲けるか」「どうやって儲けるか」「何が儲かりそうか」ばかりが注目されてしまうが、そもそも論として「理想の姿はどんなものか?」「理想に至るための課題は何か?」「どうやって解決するのか?」「誰と実現するのか」「どうやって実現するのか」…と、まずなし得たい姿がなければそれに続く解決方法の検討、実行方法を考えることもできないし、お金の話だけで言えばそれは提供価値の結果でしか無い。
だからこそ、事業企画を担当される方はぜひ一見回り道にみえるこのような事業概念をしっかり理解いた抱いた上で、改めて所属企業の「実現したい社会像」を見直し、理解いただき、それを踏まえて「理想の社会像」から事業企画に挑むことで、その企業にとって本質的な事業企画を生み出すことができるのではないかと思う。
ぜひご参考にしていただければ幸いである。
最後に宣伝
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