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新規事業企画の立て方(企業の存在意義編)

世はまさに「大新事業創出時代」

「X社がxx領域に参入」

「Y社がZ社とyy分野で業務提携」

「A社がB社に対してTOBによる買収を実施」

高度経済成長、バブル景気を経て「失った20年」と呼ばれる低成長期が「失った30年」になろうかという日本。「事業の賞味期限」が30年と言われる中、次の成長ドライバーを見つけられずにいる。

それを尻目に、新事業大国アメリカではGAFAと呼ばれるメガIT企業が勃興、それにつづけとITによるサービス革命が起き、株価は天井知らずで上昇をつづけている。また、それにつづけと中国でもBATと呼ばれるメガIT企業が生まれ、まさに日本だけが「一人負け」している状況が生まれてきている。

日本企業もこの状況に当然危機感を抱いており、あらゆる会社で「生き残りをかけて次の成長ドライバーを生み出せ!」との大号令により新規事業企画部署やCVCの設立、冒頭のニュースのような事業領域拡大投資が盛んに行われるようになった。

私の所属する会社でもまさに同じ状況が起きており、筆者自身も次の成長ドライバーを探す日々を過ごしている。

しかし、企業内で新規事業創出を担う人材は自分も含め「企業経験も無いど素人」があてがわれるのがほとんどであり、「やれ」と言われても何を企画すればいいのか、どうやって実現に向かっていけば良いのかもわからないことがほとんどでは無いだろうか。

また、会社としても創業から数十年が経過しており、創業者はおろか、創業期の経験を持つ人も残っていないことが多く、創業時の事業一本でここまで生き残ってきた会社であればあるほど、新規事業創出にあたって何をすれば良いのかを理解しておらず、新規事業創出をリード、支援していくこともできていない。

では、このような状況でどうやれば新規事業を企画し、実現に向けてドライブしていけるのだろうか?今回の記事より、自分が事業企画を行う中で「最初に知っておきたかったポイント」について整理していこうと思う。

第一回目の今回は、新規事業創出の大前提となる「そもそも企業とはなんのために存在しているのか」を理解する重要性についてまとめたい。

なぜ「会社の存在理由」理解が大事なのか?

一見すると「会社の存在理由と事業は別では?」と思いがちである。

筆者自身、担当当初は「会社と新規事業は別で考え、儲かりそうなネタでベンチャー企業的に新規事業を考え、最終的には会社をスピンアウトさせて別会社化すれば良い」と考えていた。

しかし、事業企画の経験を積むごとに見えてきたのは、事業会社として新規事業を起こす目的は「この会社で事業を行い、永続的に持続、発展させるため」であり、ただ儲かる事業を自由に企画し利益を獲れば良い、という考え方をしていない、ということであった。

ここがいわゆる「ベンチャー企業の事業創発」ともっとも大きく違う部分で、ベンチャー企業ならば創業者の感じた社会課題(と市場の大きさ、解決手段の独自性)に対して素直にアプローチし、事業化を目指していくことになる一方、既存事業を持つ企業においては、上記の通り事業創発の目的が「この会社の永続的な持続、発展」であり、だからこそ「この会社がなんのために存在しており、その基準(存在意義)に照らし合わせた時にその新規事業が正しいのかどうか」も非常に重要な投資判断基準となる(そうで無い会社もあるとは思うがあくまで自社での経験として…)。

ベンチャー企業と既存事業会社の事業投資への考え方の違い
 ベンチャー企業:自分の発見した社会課題解決にアプローチ
 既存事業会社:自社の存在意義に照らし合わせ、事業投資を判断

だからこそ、「既存事業を持つ企業でどんな事業を行えば良いのか?」という問いに対しての一番の拠り所は「その企業はどんな理由で存在しているのか」になり、それを理解し、それに照らし合わせた上で事業企画を考えることが非常に重要となる。

儲かればなんでもいい、というわけでは無いことは強調したい。

企業の存在理由は「社会課題の解決」、事業とはその手段

では「企業、つまり自社はなんのために存在している」のだろうか?

そもそも企業とは

「企業は、営利目的に限らず、一定の計画に従い継続的意図を持って経済活動を行う独立の経済主体(経済単位)を指す」

と定義される。つまり、継続的な財やサービスの提供により対価を受け、営業をつづけていくことを目的としている存在である。

財やサービスとはつまるところ「日常生活の困りごとを解決できる手段」であり、これを提供することは言うなれば「社会課題の解決」をすることである。

例えば自動車メーカーであれば「自動車を生産し、販売すること」が存在理由のように思われがちだが、自動車を生産し、販売すること自体はただの「手段」であり、企業の存在意義(解決する課題)は「人や物の搬送手段の提供により社会生活の中の”移動”を支えること」と言える。

具体例として、トヨタ自動車の例をあげてみる。

トヨタ自動車の企業ビジョンは「可動性(モビリティ)を社会の可能性に変える。」とあり、明確に社会の移動を支えることを会社の存在意義と捉えている。

また、そのビジョンを受けてのミッションが「わたしたちは、幸せを量産する。」であり、社会の移動支援を「人々の生活のなかの幸せを生み出す手段」としてとらえ、それを支えるために自動車の生産活動を事業として行い、それを誰もが手にできる環境の提供を目指し、活動していることを示している。 

上記ビジョンに当てはまるかどうかがトヨタ自動車に対しての「新規事業投資基準」となっていると考えられ、過去にはモビリティの拠点となる「住宅提供(トヨタホーム)」やモビリティの利用を支援するための「金融事業(トヨタファイナンス)」を新規事業として実現するに至っている。また、2020年には「Woven city」というモビリティの目的であり、モビリティを支援する存在である「街の開発」にも乗り出している。

Woven cityは一見すると自動車メーカーの事業とかけ離れているように見えるが、トヨタ自動車のビジョンである「可動性を社会の可能性に変える。」を起点として考えれば、移動の目的である街の開発を通じた、「モビリティと人との関係性の再構築」や、「移動を支える街の開発を通じた移動の意味の再定義」を考えており、すべてこれまでの「移動」という価値提供の延長線上に存在していること理解できる。

まとめ

事業とは詰まるところ「企業の理念(ビジョン)実現のための手段」であり、事業の起点は全て「企業の理念」である。特に既存企業の場合はこれまで培ってきた「社会課題の解決事業」も有しており、ベンチャー企業以上に企業の理念や過去の事業を踏まえた新規事業創出が求められる。

だからこそ事業企画担当者は自社の存在理由、何をなすために存在しているのかをしっかりと理解し、そこを起点に社会、お客様、そして会社に求められる事業を企画する必要があることが必要である。

次回は新規事業企画の企画フローについてまとめようと思う。

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