飯森範親指揮 日本センチュリー交響楽団&パシフィック・フィルハーモニア東京 合同演奏で「アルプス交響曲」を聴いた
日本センチュリー交響楽団&パシフィック・フィルハーモニア東京 合同演奏
第274回定期演奏会
https://www.century-orchestra.jp/concert/274-teiki/
飯森範親 指揮
角野隼斗 ピアノ
曲目
アダムズ:Must the Devil Have All the Good
R.シュトラウス:アルプス交響曲
ザ・シンフォニーホール
堂々、完売のこの演奏会、世間で大人気の若手有名ピアニスト、角野隼斗を目当ての客も多かった。その証拠に、前半で帰ってしまった客もいた。
だが、今日の演奏会の真価は、後半のアルプスまで聴いた人にしか、わからないだろう。
真に幸福な音楽体験は、長年、同じこのシンフォニーホールに通っている筆者にも、なかなかそうたびたびあるものではない。今日のステージは、まさに稀有な幸福感にあふれた時間だった。
前半のアダムズは、角野のピアノもさることながら、大編成のオーケストレーションの面白さに、惹きつけられた。
それというのも、ピアノ協奏曲なのに、もう1台、ピアノを弾いている。舞台の奥に、アップライト・ピアノがあり、ソロの角野の後を追うように時々弾いている。
ところが、そのアップライト・ピアノの譜面が、おそらくは空調の風だろうか、ずっとめくれ続けていて、見ていて気になって仕方がなかった。ピアニストも、あの状態でよく弾けたものだ。本番のアクシデントに慣れているのだろう。
噂の角野のピアノだが、とにかく音がでかいし、響きが美しい。
アンコールのラグみたいなカプースチンの曲は、シンフォニーホールで聴くとなんだか重たい。ジャズは残響が長すぎると具合悪くなるということを感じさせた。リズムが重くなるのだ。
土居豊:作家・文芸ソムリエ。近刊 『司馬遼太郎『翔ぶが如く』読解 西郷隆盛という虚像』(関西学院大学出版会) https://www.amazon.co.jp/dp/4862832679/