![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/96834724/rectangle_large_type_2_c660185537a6e0f99156747bbff3b50e.png?width=1200)
ショートショート2編 #匿名超掌編コンテスト参加作品
匿名掌編コンテスト結果発表されました
twitterで大賑わいした、板野かもさんの「匿名掌編コンテスト」がこの度結果発表となりました!
入賞の皆さまおめでとうございます。note勢すごいぞ。二位に猫野サラさん、四位に秋谷りんこさん。
もう目が回るような作業だったのではと思うのですが、板野かもさんのこのお見事な手際には感服といいましょうか、感激といいましょうか、本当にありがとうございました。最高に楽しませていただきました。しかもその中でご自身も複数作品を投稿され、五位入賞もされるという!!
これは誰の作品?! あ、この方だったのね、というところがもうツボ過ぎました。
ちなみに、noteの相互フォローでわたくしの作品にスキをくださったのは、
お一人!!
涼雨零音さん、ありがとうございます(号泣)。
でもめげない。めげないからここに載せちゃう。お読みいただけたらとても喜びます!
ハダカデバネズミ作戦
俺はダンゴムシが苦手だ。動けなくなるほどこわい。だから諜報部でも書類整理が関の山だ。愛国心なら誰にも負けないのに。
しかし千載一遇のチャンスが訪れた。
「ハダカデバネズミ作戦」
無酸素で十八分まで耐えられるこのネズミ並みの能力を得て、敵国の宇宙船設計図を盗みだせ。
設計図が保管されている部屋の酸素濃度はゼロ、高線量の放射線で満ちている。薄手の放射線防護スーツはできたが、呼吸回路を搭載すると狭い廊下を抜けられず、今まで手が出せなかったのだ。
廊下も部屋もジメジメして水滴がひどい。滑らないよう慎重に設計図に近づく。
背後に気配が。
俺は絶叫した。
ダンゴムシ。
「ダンゴクマムシ作戦を知らないのか」
話しかけてきやがる。
「クマムシは体表の水から酸素を取り込める」
背丈が一メートルはある。
「人間の千倍以上の放射線に耐えられる」
丸まっては床を転がり笑う。余裕かよ。
「この能力を人間に移植するのは難しかったが、ダンゴムシを混ぜたら解決した。お前も試してみないか。一緒に宇宙を取ろう」
「嫌だ」
「愛国者だな」
ダンゴムシになるくらいなら死んだほうがマシだ。
そう言いたかったが、もう十八分経った。
<87/ 178位>
<了>
鼠小僧は七代目
あの大泥棒鼠小僧の六代目というのが父の自慢であった。本人はさほど才能もなく、主にサラリーマンで稼いでいる。双子の男の子を授かった際のはしゃぎようときたら大変だったと母から聞いた。七代目は一卵性双生児これぞウルトラセブン! 正義の味方になぞらえるのかと問うと、鼠小僧は義賊なり、加えてセブンの戦いは善と悪に割り切れないと延々語るのには閉口したそうだ。
両親は籍を入れず、僕たちは別々の小学校へ行き、双子であることは徹底的に隠された。一人が盗みに入っている時に、もう一人が遠く離れた地でアリバイを作れば神出鬼没の七代目になれると言うのである。これは受け入れ難いと試しに家出して反抗してみたが、あっけなく祖父にみつかり念書を書かされ指紋を押した。
馬鹿者め。祖父は両親の前にその紙切れを置いて叱りつけた。筆跡はおろか、指紋だって違うぞ、一卵性といえども。二人のつむじの向きだって反対なのを、お前たちは気づいているのか。一緒なのはDNAだけで、それじゃ却って双子の仕業だと宣言してるようなものだろうが。
七年がたち僕達はもうすぐ同じ高校を卒業する。父のようにはなるなと、あの日伝説の五代目は囁いた。
<150/ 178位>
<了>