ちょっとお出かけしてみたら
noteの街に住まわせてもらっていると、居心地の良い一角に居を構えているような気持ちになります。
同じあたりに暮らしている方々と、楽しくお付き合いさせていただけて。
ありがたいことです。
でもひょいっとお出かけしてみたりすると、そこには今まで知らなかった街や人の息遣いが感じられて、新鮮だったり喜びが広がったり。実生活のお出かけと同じようなことが、noteでも起こります。
今日は、そうやって出会った長編小説を二篇、ご紹介させてください。
1. Sariさん 「アリスのための即興曲」
私はNovel Daysというサイトでも拙作を公開しているのですが、Sariさんとは、そちらで出会いました。ランキングの上位にあって、サムネイルも個性的で、クリックして読み始めたら止まらなくなりました。
その後、Noteもなさっていると知りました。
ミステリアスな人間模様。謎が、大きな振幅になったり凪になったり、暴風雨になったりしながら進んでいきます。文体が洗練されていて、丁寧な筆致のおかげでかえって怖さが増す部分があるように思えました。主人公は大学生の坂本くんですが、彼のアリスに対する態度の危うさは年齢によるものだけ…なのか。現実の繭でしっかり包んでいてくれたのが祖母ですが、その繭はある日。
先日、最終話を公開されたところですが、そのラストに唸り声をあげてやられてしまった一人です。アリスの謎が解けて終わり、ではなかった。微細な心理的謎解きが、たまらなかった。
さあ、第一話、こちらです。
2. 駒井かやさん 「あなたに首ったけ顛末記」
ピリカグランプリ2023の応募作品から、私は駒井さんとお知り合いになりました。あなたに首ったけ顛末記は、最初、スピンオフに出会いまして、そこから第一話に戻りヌマっております。
大好物である、「日常の中に不可思議がしれっと存在して、よく知っているはずの現実世界が展開しつつ、不可思議のおかげで何時間でも遊んでいたくなる」ために、止まらなくなりました。異能の象徴としての「ある生き物」もとても魅力的だし。
私は、恋愛小説が苦手なのです。恋愛が主題に置かれると、そーっと回れ右して姿を消します。けれどこのノベルは、これでもかというくらいラブが炸裂する中、それが小気味良くてたまらない。ラブをまといつつ、チラチラと別の主題が見え隠れするものですから。
軽快な文体には中毒性があり、足を踏み入れると戻れなくなるかも!
さあ、第一話、こちらです。
3. Kenさん 「スキラジ music and talk」
最後に、最近出逢った素敵なラジオをご紹介いたします。
Kenさんは、毎朝10分ほどのラジオ番組を配信されておいでです。穏やかで耳に馴染む声で語られるトーク。ちょっとした雑学、自分では手を出さないような分野でもこうやって話してもらえると「へええ」って思います。音楽の紹介があって、次のテーマへ移って。その流れがとても心地よくて、耳を傾けているとあっという間に過ぎていきます。
日曜日には「ラジオ小説」のコーナーがあり、そこで拙作「赤い鯨」を朗読していただきました。数ある中から見つけてくださって、巡り合ってくださって、とても感激しています。
noteでのKenさんは、とっても愉快。愉快さとあの穏やかな声、とても相性が良いような気がしています。
朗読していただいたのはショートバージョンで、改稿した短編がこちらです。 Novel Daysでは設定により縦書きでお読みいただけます。
何だか疲れるなあと思う日が、結構あります。ふと、気づいたのですが、昨年四月に転職してから、色々と人に会って話すことが増えた。
元々、そんなに社交的な方ではありません。でも仕事となると、その職とか、ポジションみたいなものを「演じて」振る舞っていたりします。その時間が大幅に増えたことで、くたびれているんだなあ、と気づきました。
だから、自分の中へ戻っていって、素のままで静かに過ごす時間をこれまで以上に大切にしないとな、と思ったのでした。
そんな時にご紹介したような小説や、ラジオがお供にあるというのは、このうえなく幸せなことです。