芸術家の卵 【名探偵コスティーナ x ミムコさん妄想レビュー】
立札には威厳があった。
「この下に私の最高傑作が埋まっている」
「事件の匂いがする。掘り出してはならない、だと」
ポアロに憧れる警部は、風に歪むつけ髭を気にしている。
「あの方の遺言でありますから」
町長は気が気でない。芸術家が亡くなって一週間。世界中から愛好家が訪れ悼んでいるというのに。
「一帯の土地を買い占めとは。埋まっているのは、利権がらみで死体、あるいは脱税の証拠」
「そんな」
「かばいだてするなんて、あんたもグルかね」
怒りで真っ赤になる町長。
はえとり紙より薄っぺらい真っ白な脳細胞野郎め。
麦わら帽の下にウエーブした黒髪をなびかせ、一人の女が現れた。
「警部、夜までお待ちになったら」
うごめく、もぞもぞ。
天高く満月が海に映える。
海の月へ向かうウミガメのこどもたち。
砂浜を護り抜いた芸術家の最高傑作。涙を流す人々。
女は、左の第四肋骨をはずすと、中から出てきたウミガメの涙を波へ落とし、元に戻した。
「では、ごきげんよう」
彼女の名は、名探偵コスティーナ。
<了>
とっても心惹かれるミムコさんの妄想レビュー。それに吸い寄せられて、コスティーナ久々の登場となりました。参加させていただき、ありがとうございます!
コスティーナ、who?