空飛ぶストレート
黒真珠の首飾りが狙われている、とタレコミが入った。
屋敷の周りは、厳重に警備された。
ポアロに憧れる警部は、ルパンと対決することになるのだろうか、と胸を躍らせている。
ウエーブした黒髪を撫で付けながら、一人の女が勝手口から抜け出そうとする。
捜査員たちに緊張が走る。
「お待ちなさい」
歩み寄るロングストレートヘアの女。
ウエーブ女は無言でアイスピックを突きつける。氷で出来ている。凶器を残さないつもりだ。
ぽたぽたぽた、
したたる、
水滴。
ストレート女の手には、ヘアアイロン。アイスピックを迎え撃ったのであった。
ウエーブ女は黒真珠を飛んできた鳩めがけて投げる。
なすすべもない真っ白な脳細胞。
瞬間、空に高々と舞う、ストレートヘアーのウィッグ。間一髪で首飾りをキャッチした。
「では、ごきげんよう」
女はウィッグの下で乱れた黒髪のウエーブをヘアアイロンで整えると、右の第十肋骨を引き抜き、しまって元に戻した。
彼女の名は、名探偵コスティーナ。
<了>
(407字)
「名探偵コスティーナ」でお題十本、何とか完走できました!
ご覧くださってありがとうございます。読み切りなので、どこからでもお楽しみいただけます。けれどけれど、順番にご覧いただくと、「登場人物のおかしみ」が感じやすいかもしれません。また、「コロコロ変わる名探偵」は、最終がオススメでございます!
1.アナログバイリンガル
2.しゃべるピアノ
3.金持ちジュリエット
4.数学ギョウザ
5.君に贈る火星の
6.空飛ぶストレート
7.1億円の低カロリー
8.違法の冷蔵庫
9.株式会社リストラ
10.コロコロ変わる名探偵