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アナログバイリンガル

 

 教授は、大学の自室でこときれていた。
 手の下に一枚の紙。
「アナログバイリンガル」
 バ、に大きくバツ印。

「ダイイングメッセージだ」
 ポアロに憧れる警部は、髭を触りながら宣告する。
「バリイ、君が犯人だ」
「そんな。僕はその時間にはルナとデートを」
 教授のゼミには学生が八人。
 アンナ、アンリ、リン、ルイ、ロイ、ロリイと先の二名。
 バイリンガルだけが参加できる特別講座であった。
「お言葉ですが警部さん、この文字の中には、僕たち全員の名前が書かれています」
「むむ」
 髭を小指に巻きつけ悩む真っ白な脳細胞。

 ウェーブした黒髪をダイナミックに揺らしながら、一人の女が部屋に入ってきた。
 小さなペンを取り出すと、紙にさらさらと書きつける。
「アナグラムですわ。バ、は除いて文字を並べ替えて」

 アンナ ロリイ ガ グル

 蒼白になる二名。

「では、ごきげんよう」
 女は左の十二番目の肋骨を引き抜くと、ペンをしまって元に戻した。

 彼女の名は、名探偵コスティーナ。


<了>

(402字)




「名探偵コスティーナ」でお題十本、何とか完走できました!

 ご覧くださってありがとうございます。読み切りなので、どこからでもお楽しみいただけます。けれどけれど、順番にご覧いただくと、「登場人物のおかしみ」が感じやすいかもしれません。また、「コロコロ変わる名探偵」は、最終がオススメでございます! 

1.アナログバイリンガル  
2.しゃべるピアノ 
3.金持ちジュリエット
4.数学ギョウザ
5.君に贈る火星の 
6.空飛ぶストレート
7.1億円の低カロリー
8.違法の冷蔵庫
9.株式会社リストラ 
10.コロコロ変わる名探偵