君に贈る火星の
密輸団が近く取引きすると、タレコミが入った。
内偵の結果、ビルを突き止めた。
仲間への合図だろうか。ブーメランが描かれた旗が立っている。
ポアロに憧れる警部は、大捕物を前にネクタイを真っ直ぐにする。
私服警官がインターホンを押す。
スピーカーからしわがれた声が流れる。
「君に贈る火星の」
合言葉だ。
凍りつく警部。
ウェーブした黒髪が闇から浮かび上がり、一人の女が戸口へ歩み寄った。
インターホンの画面に映し出される女の上半身が、ウルトラセブンに変わっていく。
「君に贈る火星の」
「悪夢」
女の答えを受けて扉が開く。
なだれ込む捜査員たち。
「ブーメランではなく、アイスラッガーですわ」
真っ白な脳細胞は三分間しかもたない。
「第四十三話『第四惑星の悪夢』。火星は太陽系第四惑星ですわね。第一が水星、第二が金星、第三が地球」
女が左の第一肋骨を引き抜くと、セブンがすうっと吸い込まれて消えた。
「では、ごきげんよう」
彼女の名は、名探偵コスティーナ。
<了>
(407字)
「名探偵コスティーナ」でお題十本、何とか完走できました!
ご覧くださってありがとうございます。読み切りなので、どこからでもお楽しみいただけます。けれどけれど、順番にご覧いただくと、「登場人物のおかしみ」が感じやすいかもしれません。また、「コロコロ変わる名探偵」は、最終がオススメでございます!
1.アナログバイリンガル
2.しゃべるピアノ
3.金持ちジュリエット
4.数学ギョウザ
5.君に贈る火星の
6.空飛ぶストレート
7.1億円の低カロリー
8.違法の冷蔵庫
9.株式会社リストラ
10.コロコロ変わる名探偵