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手の一枚
あこはるかさんの企画、今回は「手の一枚」でございます。参加できそうなネタを思いつくと嬉しくなっちゃう。はるかさん、いつもありがとうございます。
のっけからまいります。もうこれが言いたくてしようがない。
撮った!
これは何でしょう。
「弓懸」とか「弽」とか、いいます。弓道で使うお道具です。このように右手に嵌めます。右手とは言わないな。「妻手」とか「勝手」と申しますね。親指の付け根に太い溝があるのですが、そこに弓の弦を引っ掛けた状態で引くのです。持ったり押さえたりはしません。
大切なものを厳選して、ひとまとめにしておこうと思い始めました。両親が亡くなったとき、お棺に何を入れようか迷ったので。自分のとき入れて欲しいものはわかるようにしておこうと、その割にはゆうパックの箱だけど。そこから出してきました。燃えるはずです。鹿革でできています。
弓を握っている左手を「押手」、その握った手の形というか状態を「手の内」と申します。手の内を明かす、とか言いますよね。あの手の内です。この握りがほぼ全てを左右します。親指の付け根のあたりを「角見」と申しまして、力が伝わって抜けていく道になります。
ぎゅーっとベタ握りすると力はどこにも行けないわけです。すると、引いた弦がうまく戻っていきません。矢は飛ばず、弦は自分の右耳やら右頬やら、左の前腕の柔らかいところを直撃します。耳が飛んでったかと思うし、頬が腫れて彼氏DV男疑惑だし、左手だけ内出血してクスリやってる人みたいだし。
晴れて矢が飛ぶようになってからも、手の内の研究は続きます。マメとかタコとか、変な力が加わるから出来ちゃうんですよね。大会前に潰れたりするともう泣くしかありません。
部活の現役を引退して一年位した頃、その大切な「角見」の親指付け根が痛みだしました。整形外科へ行ったら、いくら説明してもこんなところにタコができるって理解できなかったらしくて。お嬢さんこれはガングリオンというものです、ほら、ぶすっと刺したらこのとおり中からじゅるっと、あれ、おかしいな。
出ませんわよタコですもの。
レントゲンを撮ったら骨棘が出来ていて。文字通り骨から棘がね。使いすぎると出来るんです。痛いのはそのせいだろうということになりました。
弓道は面白くて一生趣味として続けられそう、と思っていたのですが。どんどん酷くなってボタンもかけられない日が続きまして。このまま親指が使えなくなったら仕事できないよね、と思ってやめることにしました。結局、その日のうちには帰れないような業界だったので、続けられなかったとは思いますけれども。
変な力入れたら、却ってうまくいかない。これって、色んなことに通じてるよね、って時々思い出します。
昔話になっちゃいました。あれから30年以上経つだなんて、くわばらくわばら。